先走(読み)さきばしり

精選版 日本国語大辞典 「先走」の意味・読み・例文・類語

さき‐ばしり【先走】

〘名〙
① 先に立って走ること。また、そのもの。先供。
史記抄(1477)一二「司馬相如が至蜀県令負弩矢先駆と同事ぞ、さきはしりをするは人を賞翫するそ」
② 一つの事が起こる前に起こることがら。前ぶれ。前兆
※中華若木詩抄(1520頃)下「夕立来らねどもまづさきはしりに清風がざざめき」
③ 不確かな判断に基づいて、他人を出しぬいてある言動をすること。また、事実を確かめる前にひとりよがりの判断をしたり行動したりしてしまうこと。さきっぱしり。
※人情本・春色辰巳園(1833‐35)後「『手めへがいやがるのは承知してゐるは』『きつい先走りだヨ』」
暗夜行路(1921‐37)〈志賀直哉〉一「全体何を目がけて〈略〉あれ程にも一人先走(サキバシ)りしたものか」
④ 武家時代、走衆(はしりしゅう)の傍に添って走り役を勤めたもの。また、徒歩で戦場に出た兵。足軽(あしがる)
※花営三代記‐応永三一年(1424)一二月二九日「御カクゴ両人。小林小五郎高橋四郎御輿先走也」
⑤ 江戸時代、樽廻船の年中行事として行なわれた、上方の新酒を競走で江戸へ送る新酒番船。江戸後期に、一番仕立て、二番仕立ての二回にわけて出帆したため、前者を俗称したもの。一番走り。
※四井屋久兵衛廻船記録「新酒番船惣壱番〈略〉〆先走り目出度御入津」
⑥ さかなや野菜などが、季節にさきだって出回ること。

さき‐ばし・る【先走】

〘自ラ五(四)〙
先頭を走る。先に走り出る。他より先になる。先んじてことをする。
※足利本論語抄(16C)季氏第十六「見善喩へば先走る者にをいつかんとするやうに思へぞ」
② 不確かな判断に基づいて、他人を出しぬいてある言動をする。また、事実を確かめる前にひとりよがりに判断したり行動したりする。
※風流仏(1889)〈幸田露伴〉八「水は温み下草は萌えた。鷹はまだ出ぬか、雉子はどうだと、終に若鮎の噂にまで先走りて」
③ 取引市場で、相場好材料の実現よりさきに騰貴(とうき)したり下落したりする。〔取引所用語字彙(1917)〕

さきっ‐ぱしり【先走】

〘名〙 「さきばしり(先走)」の変化した語。
冷笑(1909‐10)〈永井荷風〉一二「私は現代のさう云ふお先ッ走りの雷同連中から比較したら、寧ろ頑固な保守派に属すべき人だ」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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