改訂新版 世界大百科事典 「光化学当量の法則」の意味・わかりやすい解説
光化学当量の法則 (ひかりかがくとうりょうのほうそく)
law of photochemical equivalence
この法則は光化学の第2法則ともいわれ,次のように定義されている。〈(1)物質による光の吸収は光子を単位として行われる。(2)したがって,すべての光化学の初期過程--原子または分子(以下,分子で総称する)が光の吸収に続いて起こす光分解,光異性化,他の分子との衝突による失活や反応,発光,無放射遷移などの過程--は,光子1個が分子に吸収されることによって起こる〉。J.シュタルクとA.アインシュタインは独立に,上記(2)の記述を〈すべての光化学反応は,分子が光子1個を吸収することによって起こる〉と提案していたが,光吸収した分子は必ずしも化学反応を起こすとは限らないので上記のように改められた。最近,強力なパルスレーザーによって,分子が2個またはそれ以上の光子をコヒーレントに吸収して励起される多光子吸収の現象が観測されるようになったので,(2)の〈光子1個〉という記述を〈整数個の光子〉と改める必要がある。なお,1光量子のエネルギーhνにアボガドロ数N0=6.02×1023を掛けたもの,E=hνN0を1アインシュタインという。
→光化学
執筆者:正畠 宏祐
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報