公正価値(読み)こうせいかち

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

公正価値
こうせいかち

貸借対照表上の資産や負債の価額を算定するための評価基準の一つ。公正価値は市場価格よりも広く、それを包摂する概念である。たとえば、国際会計基準では、「取引の知識がある自発的な当事者の間で、独立の第三者間取引条件により資産が交換され、または負債が決済される価額」と定義されている。公正価値情報が重視されるようになった背景には、近年の金融商品、とくにデリバティブ(金融派生商品)を利用した金融取引の隆盛がある。
 日本の会計基準では、公正価値のことを「公正な評価額」とよんでおり、その意味は「時価」と同義とされている。公正価値(=時価)は、大きく「市場価格に基づく価額」と「合理的に算定された価額」という二つの階層に分けられる。市場価格に基づく価額とは、金融商品を市場でいま売った場合に得られる金額、または金融商品を市場でいま買った場合に支払う金額である。これには市場で形成された取引価格だけでなく、取引価格がない場合の気配値(市場で売ったり買ったりしてもよい価格)も含まれる。時価の適用にあたっては、活発な市場で成立している価格が得られる場合には、市場価格に基づく価額が優先して適用される。
 これに対し、取引が少ない債券やデリバティブのように、市場価格が得られない場合には、企業の経営者の合理的な見積りによって時価を算定する。「合理的に算定された価額」とは、類似の金融商品の市場価格を参照したり、将来キャッシュ・フロー(予測される現金収支の金額)を割引計算したりして算定された価額である。
 公正価値は、現在の市場における自発的な独立当事者間の取引条件を想定していることから、資産や負債の客観的な現在価値を表すと考えられており、その適用範囲は拡大していく傾向にある。他方で、2008年(平成20)なかばから世界に広がった金融危機では、金融商品の公正価値評価によって投資家の損失確定売りが先行し、市場の混乱を増幅させる一因になったとの指摘もある。[濱本道正]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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