経済活動の国際化,とくに企業の多国籍化および資本の国際的交流が進展するにつれて,各国の会計原則間の相違点につき,相互に調整を図る必要が痛感されるようになった。それは,多国籍企業の連結財務諸表に含まれるべき関係諸会社の財務諸表が各国の会計原則の相違により,異なる会計方法にもとづいて作成され異なる会計原則に照らして監査されることによる連結および監査上の不都合,および各国の証券市場で同一企業の財務諸表が異なる会計原則にもとづく開示を要求されることの不都合を,各国の経済界とくに会計関係者が認識するようになったからである。そして,各国の会計士団体がその解決に取り組み,オーストラリア,カナダ,フランス,西ドイツ,日本,メキシコ,オランダ,イギリス,アメリカの9ヵ国の会計士団体を設立会員として,国際会計基準委員会International Accounting Standards Committee(IASC)が1973年に設立された。この委員会には世界各国の約90の会計士団体が加入し,83年までに,その理事会の審議により20件余りの会計問題につき国際会計基準を定めた。なお,毎年2~3件ずつ新しい問題について,国際会計基準を設定する予定で作業と審議を続けている。国際会計基準は,民間団体の自由意志による同委員会への加入によってそれを尊重する道義的責任を生ずるものであるから,法律的な強制力や拘束力をもつものではない。しかし同委員会に加入した会計団体は,それを支持し,かつその普及と各国の制度との調整について説得的努力を払う責務を有する。そのことにより,国際会計基準は,日本を含めて各国の会計原則に相当の影響を及ぼしつつある。また,国連やOECDの開示基準の審議にあたっても,会計処理に関する唯一の国際基準として,その審議の基礎を提供している。国際会計基準は日本公認会計士協会より印刷公刊されている。各国の証券市場監督当局で構成する証券監督者国際機構は1995年,この基準を2000年をめどに承認する考えを示した。
→会計原則
執筆者:中島 省吾
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国際財務報告基準の旧称。1973年に設立された国際会計基準委員会(IASC)が作成した国際的な統一会計基準であったが、2001年IASCが国際会計基準審議会(IASB)に改組され、国際会計基準は国際財務報告基準とよばれるようになった。
[佐藤宗弥・編集部]
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