日本大百科全書(ニッポニカ) 「円測」の意味・わかりやすい解説
円測
えんじき
(613―696)
新羅(しらぎ)(朝鮮)の王族出身の学僧。3歳で出家し、15歳で中国に遊学、長安で摂論(しょうろん)宗の法常(567―645)や僧弁(568―642)に就いて学び、玄奘(げんじょう)帰朝(645)後は、その門下として経典の注釈や翻訳に従事した。晩年は西明寺(さいみょうじ)に住したため西明円測とも称せられ、彼の門下は西明寺派ともよばれる。彼には玄奘以前の真諦(しんだい)教学の影響も強く、若くして玄奘に学んだ基(き)(窺基(きき))門下の慈恩寺(じおんじ)派とは異なった側面を示し、後の新羅の仏教学にも影響を与えた点が注目される。多くの注釈を著したが、現存するものは『解深密経疏(げじんみっきょうしょ)』10巻(うち第10巻は欠、漢訳からのチベット訳は全巻現存)、『仁王経疏(にんのうきょうしょ)』6巻、『般若心経賛(はんにゃしんぎょうさん)』1巻のみである。
[袴谷憲昭 2017年1月19日]