再発性多発軟骨炎(読み)さいはつせいたはつなんこつえん(英語表記)Relapsing polychondritis

六訂版 家庭医学大全科 「再発性多発軟骨炎」の解説

再発性多発軟骨炎
さいはつせいたはつなんこつえん
Relapsing polychondritis
(膠原病と原因不明の全身疾患)

どんな病気か?

 全身の軟骨組織炎症と破壊が生じる大変まれな病気で、男女差はなく中年に発症することが多いといわれています。好発部位は耳、鼻、関節、気管などの軟骨で、炎症性の破壊によるさまざまな症状が出現します。

原因は何か

 原因は不明ですが、軟骨の成分であるタイプⅡコラーゲン糖蛋白質プロテオグリカンに対する過剰な免疫作用により、軟骨の炎症、破壊が生じると考えられています。

症状の現れ方

 発症は比較的急で、寛解(かんかい)(症状が落ち着いている状態)と増悪(ぞうあく)(ますます悪くなる状態)を繰り返します。耳介軟骨(じかいなんこつ)に初発することが多く、耳介の疼痛(とうつう)発赤(ほっせき)、変形を来します。また、関節軟骨、鼻の軟骨の障害頻度が高く、関節痛や鼻すじの変形(鞍鼻(あんび))をきっかけに診断されることも少なくありません。

 とくに注意が必要なのは気管軟骨炎で、軟骨破壊の結果、呼気時に気管が狭くなり、喘鳴(ぜんめい)呼吸困難が生じることがあります。その他、眼症状(強膜炎など)、血管炎、腎炎(じんえん)膠原病(こうげんびょう)などを合併することがあります。

検査と診断

 この病気の診断を確定する特有な検査はありません。体の炎症を示す赤沈(せきちん)亢進(こうしん)CRPの上昇、軽度の貧血、白血球増多などがみられます。抗タイプⅡコラーゲン抗体がみられることがありますが、出現頻度が低く、診断にはあまり役にたちません。

 この病気の診断は臨床症状と病理検査で行います。すなわち、①両耳介の軟骨炎、②非びらん性の多発関節炎、③鼻軟骨炎、④眼の炎症、⑤気管の軟骨炎、⑥聴覚、平衡感覚異常、⑦軟骨の生検で、軟骨炎の組織所見のうち3項目以上を認めた場合、再発性多発軟骨炎と診断されます。

治療の方法

 軟骨破壊を防ぐために、炎症を抑えることが重要です。軽症では、非ステロイド性抗炎症薬や少量のステロイド治療が行われます。気管軟骨炎などの重症の場合は、大量のステロイド療法を行うとともに、メトトレキサート、シクロフォスファミドなどの免疫抑制薬を使用する場合があります。

 また、気管軟骨炎では気管狭窄(きょうさく)による気道閉塞(へいそく)のため気管切開、ステント挿入、気管形成術など外科的治療が必要なことがあります。呼吸器症状に注意して、早めに主治医と相談することが大切です。

診断された患者さんが気をつけること

 再発性多発軟骨炎は耳鼻咽喉科内科、外科の連携が重要ですので、総合病院での外来管理が望ましいと思われます。急性期には軟骨組織が脆弱(ぜいじゃく)になっているため、局所の安静を保つことが大切です。

 また、ステロイド薬を長期間服用することになるので、骨粗鬆症(こつそそうしょう)感染症に注意して、うがい、手洗いを励行すること、疲労を避けて睡眠を十分とることをおすすめします。

杉山 英二

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

家庭医学館 「再発性多発軟骨炎」の解説

さいはつせいたはつなんこつえん【再発性多発軟骨炎 Relapsing Polychondritis】

[どんな病気か]
 軟骨(なんこつ)が炎症をおこし、腫(は)れや痛みを生じる病気で、自己免疫疾患(じこめんえきしっかん)(免疫のしくみとはたらきの「自己免疫疾患とは」)と考えられています。
 いろいろな部位の軟骨がおかされますが、もっとも多くみられるのは耳介(じかい)です。突然の激しい痛みと腫れが生じ、くり返すと耳が変形します。
 そのほか、内耳(ないじ)の軟骨や気管支の軟骨に炎症がおこることもあります。気管支の軟骨におこると、呼吸困難になったり声がしゃがれたりします。
 心臓や血管の軟骨に炎症がおこると、弁膜症(べんまくしょう)(「心臓弁膜症とは」)や、血管が腫れる動脈瘤(どうみゃくりゅう)がみられることもあります。
 関節炎(かんせつえん)、結膜炎(けつまくえん)などの目の炎症などもおこります。また、2割ほどの患者さんには、ほかの膠原病(こうげんびょう)(免疫のしくみとはたらきの「膠原病について」)を合併することがあります。
[原因]
 免疫の異常によって、軟骨をつくっているたんぱく質(コラーゲン)を攻撃する抗体(こうたい)がつくられ、そのために軟骨が炎症をおこすと考えられています。
[検査と診断]
 血液を検査すると、血液沈降速度(けつえきちんこうそくど)(血沈(けっちん))の増加など、一般の炎症でみられる反応とともに、一部の患者さんでは、リウマトイド (リウマチ)因子や抗核抗体(こうかくこうたい)(自分の細胞の核を標的とする抗体)がみられます。
 特徴的な軟骨の炎症症状がみられれば、診断がつきます。
[治療]
 軽症の場合は、副作用のことを考え、非ステロイド抗炎症薬を使用します。
 しかし、症状が強い場合は、ステロイド(副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモン)薬で治療しなければなりません。

出典 小学館家庭医学館について 情報

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