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血沈 けっちんerythrocyte sedimentation rate

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

血沈
けっちん
erythrocyte sedimentation rate

赤血球沈降速度のこと。赤沈ともいう。赤血球の比重は血漿より大きいから,血液をクエン酸ソーダなどで凝固しないようにして管内に静置すると,上部の血漿と下部の赤血球に分離する。この現象を赤血球沈降反応といい,その沈降の速度を赤血球沈降速度という。この速さは血漿中の蛋白質の性状によって決り,結核をはじめとする急性,慢性の各種感染病や癌などでは,この沈降が速くなる。正常値は最初の1時間値で男 10mm以下,女 15mm以下とされている。この検査法は特定の病気を指摘するものではないが,方法が簡単で数量化することができるために,臨床上の病勢の判断のほか,集団検診などのスクリーニングに使われることが多い。

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百科事典マイペディアの解説

血沈【けっちん】

赤沈とも。赤血球沈降速度(反応)の略。血液に抗凝固剤を加えて一定の細管内に注入後,直立放置すると,血漿(けっしょう),血球の分離が起こるが,各種感染病,膠原(こうげん)病,悪性腫瘍(しゅよう),貧血等の患者ではその分離が短時間で起こる。
→関連項目肺結核

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世界大百科事典 第2版の解説

けっちん【血沈】

正確には赤血球沈降速度erythrocyte sedimentation rateといい,これを略して赤沈ともいう。血漿中に浮遊している赤血球が沈降する速度を測定することにより,病気の有無や病勢を判断する臨床検査法。診療や健康診断等で,最も簡単で基本的な検査方法の一つとして広く用いられている。その原理はまだ十分明らかではないが,次のように考えられている。すなわち,赤血球は表面に陰性荷電をもち互いに反発する傾向にあるが,種々の原因により血漿タンパク質のうち陽性荷電を有するグロブリンフィブリノーゲン等が増加すると,また逆に陰性荷電を有するアルブミンが減少すると,赤血球表面の陰性荷電が弱まり,赤血球どうしの反発が減って凝集しやすくなる。

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大辞林 第三版の解説

けっちん【血沈】

〔「赤血球沈降速度」の略〕
凝固を阻止した血液をガラス管内に垂直に立てた状態で、赤血球が一定時間に沈降する速度。赤血球の数・血漿タンパクの性状などに影響され、炎症性疾患・悪性腫瘍しゆよう・貧血・妊娠などで亢進、赤血球増多症・ DIC などで遅延する。赤沈。 ESR 。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

血沈
けっちん

赤血球沈降反応の略称で、赤沈ともいう。1918年スウェーデンのファーレウスR. S. Fahraeusは、妊娠の早期診断法を探しているうちに、凝固を防止した血液を直立した試験管に入れて静置しておくと、妊娠した場合では、赤血球が非常に早く沈殿していくことをみいだした。その後、この現象は、妊娠に限らず、種々の疾患でもおこる非特異的な反応であることがわかり、赤血球沈降反応とよばれることになった。この反応は、後述するように、血漿(けっしょう)中における赤血球の「浮遊性の安定度」の尺度ともみることができる。
 この赤血球沈降反応は、手軽に実施できるため、病院での臨床検査に広く用いられてきた。普通に行われるのはウェスターグレーンWestergrenの方法で、凝固防止用として3.8%のクエン酸ナトリウム0.4ミリリットルを混合した血液2ミリリットルを、内径2.5ミリメートル、長さ300ミリメートルの試験管に吸い上げ、垂直に保持して、1時間後と2時間後における赤血球層の沈下の程度を読み取る。この試験管には0~200ミリリットルの目盛りがつけてあり、その基準値は、1時間で男子は0~6.5ミリリットル、女子では0~15ミリリットルである。一般に女子では男子より生理的な変動の幅が大きい。
 血沈速度を左右する因子としては、まず貧血があげられる。貧血の場合は、赤血球数が少ないから、その沈下が他の血球との衝突によって妨げられることが少なく、血沈は促進する。次に関与するのが物理的な法則である。沈降する赤血球は、遅かれ早かれ貨幣が積み重なったような、集合した凝集現象aggregationをおこす(これを連銭形成rouleaux formationとよぶ)。一般に液体中を半径rの球体が沈降する場合、次のストークスの法則が成立する。

μは沈降速度、ηは液の粘度、ρ1およびρ2は球体と液体の密度、は重力の加速度である。
 この式から明らかなように、沈降速度は、沈下する固体の半径の2乗に比例するから、赤血球が連銭をつくり、大きな塊となると、もっとも有効に沈降速度が促進される。
 多くの疾患に際してみられる赤血球沈降速度の増加は、この凝集の促進に由来している。この場合、沈降速度の促進した赤血球を分離し、生理的食塩水中に浮遊させると沈降速度は著しく遅くなる。すなわち、促進の原因は赤血球自体にあるのではなく、血漿中にあることが示唆されるわけである。この血漿中の促進因子としてもっとも注目されているのが血漿タンパク質である。血漿タンパク質は一定の電荷を帯びており、赤血球周囲を覆って、その浮遊性の安定度を維持していると考えられる。これらタンパク質のうち、線状タンパクで等電点のもっとも高いフィブリノーゲンがいちばん血沈の促進度と関係が深く、ついでグロブリンとなる。一方、アルブミンは、血沈の促進とは負の相関関係にある。[本田良行]

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