写真特性曲線(読み)シャシントクセイキョクセン

化学辞典 第2版 「写真特性曲線」の解説

写真特性曲線
シャシントクセイキョクセン
photographic characteristic curve

写真感光材料の入出力特性を表現するために,横軸に露光量Eの常用対数,縦軸に写真濃度Dをとって表した図のような曲線しばしばHD曲線(Hurter-Driffield曲線)とよばれる.図のfかぶり濃度,Ds は飽和濃度を与える.特性曲線は多くはABのすそ部,BC直線部,CFの肩部よりなり,直線部の勾配(tan θ)はガンマとよばれて階調性尺度となる.ガンマの大きいほど写真のコントラストは大きく硬調になる.直線部BCの横軸への投影は,入力側の光像に許される最大コントラストを規定し,ダイナミックレンジ(dynamic range)または寛容度(latitude)とよばれる.写真特性曲線は感度,そのほか写真の諸特性を測定する基礎となり,それらの測定をセンシトメトリー(sensitometry)という.ハロゲン化銀写真など像増幅過程を含む写真法では特性曲線は現像法に依存するので,センシトメトリーの際は注意を要する.図はネガ型の感光材料の特性曲線であるが,ポジ型材料や反転現象を行う場合には,曲線は逆に右下がりの形となる.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「写真特性曲線」の意味・わかりやすい解説

写真特性曲線
しゃしんとくせいきょくせん
photographic characteristic curve

写真感光材料に与えた露光量と現像処理後に得られた画像の濃度 (黒化度) の関係を表わす曲線。ハーター=ドリフィールドの特性曲線または HD 曲線ともいう。露光量 (照度と露出時間の積) の対数値を横軸に,濃度を縦軸にとって表わす。露光が少い (暗い) 範囲では濃度は露光量の増加とともにゆっくりと増加するが,通常の明るさの露光量範囲では濃度は露光量の対数値に対して直線的に増加する。さらに露光量が増す (明るい) と濃度は再びゆっくりと増加し,やがて一定に達する。濃度が露光量の増加とともに直線的に増加する露光範囲をラチチュード,直線の延長と横軸との交点の露光量をイナーシャという。直線部分では露光量Hと濃度Dとの間には D=γ log H+C の関係がある。γ (ガンマ) は写真のコントラストを表わす量で,γの大きな感光材料はコントラストが大きい。 HD 曲線は乳剤本来の性質だけではなく,現像条件によっても変化する。

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世界大百科事典(旧版)内の写真特性曲線の言及

【写真フィルム】より

…現像によって被写体と明暗が逆になる(カラーの場合は色相も補色になる)ものをネガタイプ,また現像(この場合の現像を反転現像という)によって被写体と同じ像が得られるものをポジタイプ(リバーサルタイプ,反転タイプともいう)という。
[フィルムの写真特性]
 フィルムを含め,感光材料の写真効果の特性は,あてられた光の量(露光量)Eの常用対数,すなわちlog10Eに対する写真濃度Dで表され,この曲線を写真特性曲線(単に特性曲線ということが多い)と呼ぶ。露光量は,露光の照度と露光時間の積で表されるが,厳密には照度の時間積分値である。…

※「写真特性曲線」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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