改訂新版 世界大百科事典 「凍結工法」の意味・わかりやすい解説
凍結工法 (とうけつこうほう)
freezing process
地盤を凍結状態にして掘削する工法。元来はヨーロッパで地下水帯を貫いて炭坑を掘るために使われていた方法であるが,日本では都市における地下工事を安全に進める補助工法として,1961年の試験施工以来,20年間に約200件の実施例がある。掘削予定範囲を囲むように凍結管を埋設し,冷却液を送り込んで掘削範囲周辺の地盤を凍結状態とし,遮水性と強度の優れた地盤を一時的に作って掘削を行う。この工法には,塩化カルシウム水溶液(氷結点-50℃)を冷凍機で冷却して凍結管内を循環させる方法と,液体窒素(蒸発温度-196℃)を凍結管に送る方法がある。小規模(凍土量150m3以下)で短期間の場合は後者でよいが,現在までの施工はほとんどが前者によっている。凍結工法の長所は,ほとんどの種類の土に適用でき,凍結の範囲や程度にむらがなく,遮水性と強度が十分に確保できることである。反面,短所としては,凍結に要する時間が長く,地下水流があるときは凍結が阻害されるのでその対策が必要であること,凍結時に地盤が膨張隆起し,解凍時に沈下するので,周辺に対するこの影響を考慮する必要があることなどがあげられる。同じ目的で実施される薬液注入工法に比較して,改良土量当りの工事費は高い。
執筆者:植下 協
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報