日本大百科全書(ニッポニカ) 「処方せん医薬品」の意味・わかりやすい解説
処方せん医薬品
しょほうせんいやくひん
医師、歯科医師または獣医師(以下、医師等)から処方箋(せん)の交付を受けた者のみに、薬局開設者または医薬品の販売業者が販売または授与することのできる、厚生労働大臣の指定した医薬品。「要指示医薬品」として薬事法にて規制されていたもので、2002年(平成14)薬事法の一部改正により「処方せん医薬品」に改められた。
その背景として、要指示医薬品に指定されていない麻薬製剤、注射剤等の医薬品が、医師等の処方箋または指示により販売または授与されており、さらに口頭指示による明瞭でない販売等の改善も求められ、医薬品の適正使用を徹底するため、指定拡大の必要があった。3か年の経過措置期間を経て、2005年2月10日付厚生労働省告示第24号で具体的に指定され、同年4月1日より適用になった。処方せん医薬品の内容は、薬事法改正前に指定されていた要指示医薬品すべてのほか、麻薬、向精神薬、覚醒(せい)剤、覚醒剤原料、特定生物由来製品(血液製剤等)と注射剤のすべてで、要指示医薬品として指定されていた放射性医薬品以外の医薬品は有効成分名で指定がなされた。
以後、新薬の承認とともに指定の追加が行われている。医療用医薬品すべてが処方せん医薬品として指定されたわけではなく、ビタミン剤、健胃消化剤、漢方薬など比較的作用の緩和な薬剤や外用剤などは指定されていない。しかし、実際にはこれらもすべて医師等の処方箋によって使用される。
処方せん医薬品は、第1種製造販売業の許可を受けた者でなければ、製造販売することはできない。また、薬局開設者または医薬品の販売業者は、医薬品の販売または授与に関する事項を帳簿に記載し、その記録を2年間保存しなければならない。
[幸保文治]
『薬事日報社編・刊『処方せん医薬品・処方せん医薬品以外のリスト』(2006)』