日本大百科全書(ニッポニカ) 「注射剤」の意味・わかりやすい解説
注射剤
ちゅうしゃざい
医薬品の溶液、懸濁液、乳濁液、または用時に溶剤に溶解もしくは懸濁して用いる医薬品で、皮膚内または皮膚あるいは粘膜を通して体内に直接適用する無菌の製剤。注射剤の種類には、溶剤および医薬品そのものの物性により、水性注射剤、非水性注射剤、懸濁性注射剤、乳濁性注射剤、溶解または懸濁して用いる固形注射剤がある。水性注射剤は溶剤が注射用蒸留水であり、非水性注射剤の溶剤は植物油が主であり、そのほかエタノール、プロピレングリコールなど有機溶剤が用いられる。固形注射剤には凍結乾燥品と、粉末のまま無菌的にバイアル(小瓶)またはアンプルに封入したものがあり、粉末注射剤ともいう。注射剤の容器には、ガラス製のアンプル、バイアル、ボトルと、プラスチック製のアンプル、ボトル、バッグがある。注射剤の条件は、(1)無菌であること、(2)不溶性異物が混入していないこと、(3)発熱物質が存在しないこと、(4)浸透圧はなるべく血清と等張であること、(5)なるべく血清の水素イオン濃度(pH)に近いこと、(6)組織障害性のないこと、があげられるが、そのうち(1)(2)(3)は必須(ひっす)条件である。
[幸保文治]