改訂新版 世界大百科事典 「出生死滅過程」の意味・わかりやすい解説
出生死滅過程 (しゅっせいしめつかてい)
birth and death process
生物集団の個体数の時間的推移をモデルとする,自然数の値をとるマルコフ過程の一種であって,新たな個体の出生によって増加し,死亡によって減少する。時刻tにおける個体数をX(t)とし,微少時間間隔(t,t+h)の間にnから1だけ増加する確率をλnh+o(h),nからn-1に減少する確率をμnh+o(h)(λn,μnは負でない定数),1より大きな変化が起こる確率はo(h)であるとする。時刻tで状態nにある確率をPn(t)とかき,とおけば,
Pn′(t)=-(λn+μn)Pn(t)+λn-1Pn-1(t)+μn+1Pn+1(t)
P0′(t)=-λ0P0(t)+μ1P1(t)
(n≧1)
が得られる。これを解いて問題の出生死滅過程の分布が定まる。時刻tにおける平均値M(t)は,で計算されるが,Pn(t)もM(t)もその具体形は一般には複雑である。すべてのnについてμn=0なら純出生過程と呼ばれ,とくにλn≡λのときはポアソン過程である。また,すべてのnに対してλn=0のときが純死滅過程である。興味があるのは線形増加の場合,すなわちλn=nλ,μn=nμのときで,もし時刻0でM(0)=n0ならM(t)=n0e⁽λ⁻μ⁾tがわかる。これら出生死滅過程の特徴として,一定の状態を持続する時間の確率分布が指数分布となることがあげられる。そのような特殊性にもかかわらず,待行列やサービスの問題など多くの応用がある。
執筆者:飛田 武幸
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報