日本歴史地名大系 「別府市」の解説 別府市べつぷし 面積:一二五・一一平方キロ(境界未定)県の中央部に位置する温泉・観光都市。東は別府湾に臨み、北は速見郡日出(ひじ)町。北西は十文字原(じゆうもんじばる)高原を隔てて宇佐郡安心院(あじむ)町に対し、西は鶴見(つるみ)岳(一三七四・五メートル)・内(うち)山(一二七五メートル)・伽藍(がらん)岳(硫黄山とも。一〇四五・三メートル)・扇(おうぎ)山(大平山とも。七九二メートル)・由布(ゆふ)岳(通称豊後富士。一五八三・五メートル)の火山塊を隔てて大分郡湯布院(ゆふいん)町。南は標高三〇〇メートル前後の高地を隔てて大分郡庄内(しようない)町・挟間(はさま)町、南東は高崎(たかさき)山(六二八・四メートル)の西麓を流れる鳴(なる)川を境に大分市に接している。市域の北部は十文字原高原の東麓が海岸まで迫り、高原から流出する冷(ひや)川・無田(むた)川と平田(ひらた)川が東流している。冷川と無田川の河口はかつては潟湖を形成し、各々関(せき)ノ江(え)、竈門(かまど)の入江といったが、江戸時代には陸地化し、現在関ノ江は水田、竈門の入江は住宅地になっている。中央部は北から春木(はるき)川・境(さかい)川・朝見(あさみ)川が東流し、その流域は石垣原(いしがきばる)扇状地である。春木川の上流域には古い温泉地の鉄輪(かんなわ)地区・鶴見地区があり、中流域には北石垣(きたいしがき)地区がある。下流域は第二次世界大戦後に市街地化して上人(しようにん)町となった。春木川と境川に挟まれた地帯には中央に実相寺(じつそうじ)山(一六九・八メートル)があり、山を挟んで西部が鶴見地区、東部は石垣地区となっている。境川と朝見川との間は市の中心街で、市役所などの公共施設が集中し、またJR日豊本線の別府駅がある。朝見川は断層崖に沿って流れる川で、川の南部は断層崖で上流から堀田(ほりた)・観海寺(かんかいじ)・朝見・浜脇(はまわき)の四地区があり、観海寺・浜脇は古くからの温泉場である。陸上交通路・海上交通路とも比較的よく発達しており、大分市から北上する国道一〇号とJR日豊本線が海岸沿いに走り、JRの駅は別府駅のほか北部に別府大学駅・亀川(かめがわ)駅、南部に東別府駅がある。そのほか大分市とは大分自動車道で結ばれ、同道と主要地方道別府―一の宮線で湯布院町方面と、宇佐別府道路で宇佐市方面と、国道五〇〇号で安心院町方面と結ばれている。港は別府国際観光港が春木川の河口にあり、広別汽船フェリー、関西汽船フェリー、宇和島運輸フェリーが就航、広島・阪神・愛媛方面と連絡している。大分空港・大分市へのホバークラフトの便もある。市名の別府は直接的には近代の別府町、近世の別府村につながるが、さかのぼれば中世の別府(弁分)に由縁する。〔原始〕旧石器時代および縄文時代中期までの遺跡は市の南部・北部・西部の高原地帯に発見されており、旧石器時代の遺跡として小畑(おはた)遺跡・鳥越(とりごえ)遺跡がある。 出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報 Sponserd by
ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「別府市」の意味・わかりやすい解説 別府〔市〕べっぷ 大分県中部,別府湾奥に位置する市。 1924年市制。 56年南端村の一部を編入。市域のほぼ中央を横切る断層線上の南部に別府,浜脇,観海寺,堀田 (ほりた) ,北部に亀川,柴石 (しばせき) ,鉄輪 (かんなわ) ,明礬 (みょうばん) の8温泉場があり,古くから別府八湯として知られた別府温泉郷を形成。明治以後は温泉掘削技術の進歩,水陸交通の発達などにより急激に発展して,現在では宿泊施設約 1000,年間利用客約 1000万をこえる大観光保養温泉都市となった。この間,第1次世界大戦後の好況期には別府駅西方の山手扇状地が高級住宅・別荘地域として開けるなど,市街地は次第に周辺に延びたが,1960年の別府国際観光港の開設,64年の九州横断道路開通などを契機として,市街地の中心はやや北に移動している。中心商店街には銀座街,銀天街など6つの遊歩商店街がある。北部の鉄輪周辺には坊主地獄,海地獄,血の池地獄,竜巻地獄などと呼ばれる特色のある大泉源があり,観光客を集めている。研究施設としては九州大学温泉治療学研究所,京都大学付属地球物理学研究施設,大分県温泉熱利用農業研究所などがあり,周辺では温泉熱を利用した野菜・花卉栽培も行われる。式内社火男火売 (ほのおほのめ) 神社,朝見八幡社,吉弘神社などがある。鬼の岩屋古墳は史跡。市域西部の鶴見岳周辺は阿蘇くじゅう国立公園に属する。 JR日豊本線,九州横断道路,国道 10号線が通じ,大分自動車道のインターチェンジがある。別府港からは広島,松山 (高松) -神戸-大阪,八幡浜などへのフェリーが発着する。面積 125.34km2(境界未定)。人口 11万5321(2020)。 出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報 Sponserd by