日本大百科全書(ニッポニカ) 「別府温泉郷」の意味・わかりやすい解説
別府温泉郷
べっぷおんせんきょう
大分県別府市にある八つの温泉地の総称。別府八湯ともよぶ。源泉総数3791、うち利用源泉は2853。湧出(ゆうしゅつ)量毎分9万4801リットル。浴用のほか、園芸、湯の花、暖房、観覧、発電、養魚などにも利用している。泉質は単純温泉、塩化物泉、炭酸水素塩泉、含鉄泉、硫酸塩泉、酸性泉、含アルミニウム泉、硫黄(いおう)泉の8種に及ぶ。温泉は南部と北部の、地塊運動で生じた断層線と、これに伴う二次断層線に集中し、南部に別府・浜脇(はまわき)・観海寺(かんかいじ)・堀田(ほりた)、北部に亀川・柴石(しばせき)・鉄輪(かんなわ)・明礬(みょうばん)の各温泉場が発達している。
狭義の別府温泉は、明治中期には浜脇・鉄輪と並び栄えたが、その後、温泉量、交通、地形に恵まれ、もっとも発達し、その名は全温泉地帯の名称ともなった。単純温泉、炭酸水素塩泉、塩化物泉など多種。京都大学地球熱学研究施設、九州大学病院別府病院がある。浜脇温泉は東別府駅付近。大正末期ころから湧出量が減じ、衰退している。観海寺温泉は標高百数十メートル、別府湾の眺めがよく、大型ホテルもある。単純温泉。さらに奥の堀田温泉は交通不便で衰退、浜脇などへ給湯している。硫黄泉。亀川温泉は亀川駅付近。塩化物泉。別府医療センターがあり、湯治場風景を残す。柴石温泉は亀川駅西方2キロメートル、渓流に臨む閑静な湯治場。塩化物泉。滝湯が名物。鉄輪温泉は単純温泉、酸性泉など多種で、地獄地帯を含み、大分自動車道も通じ、ホテル・旅館が急増するなか、自炊湯治客宿も多い。温泉熱を利用する県農林水産研究指導センター農業研究部花きグループの諸施設もある。明礬温泉は江戸時代の明礬採取地が明治以後湯の花製造所と温泉宿に変わった。閑静な療養地。硫黄泉・含アルミニウム泉。
[兼子俊一]
地獄巡り
北部から西部に、一孔当り湧出量・熱量が他の数十倍にも及ぶ大きな泉源があり、地獄とよばれる。血(ち)の池(いけ)地獄は池面が赤色沈殿物(なかばは酸化鉄)で覆われ、海地獄(うみじごく)は白色沈殿物の強い反射で青色を呈し、鬼石坊主地獄(おにいしぼうずじごく)は泥火山の一種、竜巻地獄(たつまきじごく)は間欠泉である。ほかに白池(しらいけ)・山(やま)・カマド・鬼山(おにやま)の諸地獄があり、これらを巡るバスがある。
[兼子俊一]