利潤論争(読み)りじゅんろんそう

改訂新版 世界大百科事典 「利潤論争」の意味・わかりやすい解説

利潤論争 (りじゅんろんそう)

1960年代前半にソ連で行われた経済論争。ソ連では1950年代に入って生産,消費,流通の各分野で数多くの経済的困難が表面化してきた。この困難の多くはソ連の硬直的な中央集権的計画システムそのものから発生していると考えられた。そこで56年以後,多くの制度改革提案が提出されはじめた。制度改革をどう進めるかをめぐり論争はしだいに激しさを増し共産党をも巻き込み,62-64年にその最盛期を迎えるのである。1962年9月9日付の《プラウダ》に〈計画,利潤ボーナス〉と題する一つの論文が掲載された。ハリコフ大学教授Y.G.リーベルマン(1897-1985)により書かれたこの論文は,社会主義企業においても企業効率の評価には利潤が不可欠であると主張し,それに基づいてボーナス制度の導入を提案した。この提案(リーベルマン方式)は社会主義国ソ連においてはきわめて挑戦的なものであり,多くの賛否両論を巻き起こした。このようにして62-64年の間に精力的に展開されたソ連の経済改革の基本方向に関するこの論争は,社会主義経済システムのなかで利潤の役割をどのように位置づけるかを中心に行われたので,〈利潤論争〉と呼ばれている。ところでこの論争を通じてリーベルマン提案は,ソ連の経済システムの部分的手直しにはとどまらず,実はその根本的修正を要求する可能性をはらんでいることが判明した。このために,より小規模でより妥協的な内容の経済システムの改革が構想され,それが65年の経済改革に結実していくのである。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「利潤論争」の意味・わかりやすい解説

利潤論争
りじゅんろんそう

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