改訂新版 世界大百科事典 「副状」の意味・わかりやすい解説
副状/添状 (そえじょう)
中世において本文書に副(そ)えた書状。安堵状,裁許状,寄進状,補任状,沽却状,譲状,訴状などの公験(くげん)を当事者に送付するときに,本文書の補足・解釈・経過などとともに送付の旨を書いて副えるもの。11~12世紀,太政官における消息宣下(口宣に副えた上卿書状),国司庁宣に副え当事者に与えた院宣などに使用されたのが早い例で,公式様文書の符や解(げ)による奉行・進達が職権的に機能しなくなる時期に生み出されたものである。これはまた日本における書状様式の確立と書状の公文書化の時期に一致している。
なお,年貢,贈物,道具など物品の送進のとき添える書状は,送進状といい,副状とは区別されている。また国司庁宣を留守所が施行したり,室町殿(将軍)の御判御教書を管領や守護が施行・遵行するように,職制上の上意の文書を担当下部機関に周知・実行させるために,下達の過程で順次書き添える文書は,施行(しぎよう)状,遵行(じゆんぎよう)状といい,副状とは異なるものである。
執筆者:富田 正弘 また,人の紹介,物の贈答などの際の送進状は添状,添文,添簡とも称して中世・近世には一般的に使用されたが,訴訟文書や証文に証拠書類として添付される文書も添状といった。近世の土地証文には,本証文の記載内容の変更などを証明するために添証文が付されていることがあるが,これも添状の一種といえよう。
執筆者:安藤 正人
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報