そ‐じょう ‥ジャウ【訴状】
〘名〙
※令義解(718)公式「官司准二其訴状一。即下二推不レ給所由一。然後断決」 〔宋書‐文五王伝〕
(ロ)
中世、
訴人が訴訟を起こす手続きとして、証拠文書などをそえて
幕府の賦
(くばり)奉行方に提出した文書。その
書式は法で定められてはいなかったが、おおよそ類似の
様式によっている(沙汰未練書(14C初))。申状・解状
(げじょう)・目安ともいう。また最初の訴状を本解状・初問状、二回目の訴状を二問状、三回目のを三問状といい、二問状以下を
重訴状・重申状という。⇔
陳状(ちんじょう)・
訴陳状。
※御成敗式目(1232)三五条「右就
二訴状
一、遣
二召文
一事、及
二三ケ度
一 猶不
二参決
一者、訴人有
レ理者、直可
レ被
二裁許一」
(ハ) 願いごとをするとき、
領主、支配者などに提出する書付け。
願書。嘆願書。
※
蔭凉軒日録‐寛正六年(1465)二月一五日「以
二此時
一彼二人赦免之事。自
二門中
一以
二訴状
一申
レ之」
②
民事訴訟で、訴えの
趣旨を記載して裁判所に提出する
書面。〔民事訴訟法(明治二三年)(1890)〕
[語誌](1)文書様式としての①は「解
(げ)」の
系統を引くものである。書出しは「何某謹言上」「何某謹訴申」などで、書止めは「言上如件」「訴申如件」などが多い。
宛名は書かないのが普通であるが、時代が下ると共に差出人名・宛名を記したものが多くなる。南北朝時代以後は、書出しに「目安」と記し、書止めに「目安言上如件」と記すものが見られるようになる。
(2)
鎌倉幕府の訴訟制度では訴人が訴状を提出すると、
被告人にそれに対する
反論を書いた
陳状の提出を求めた。この訴状・陳状の提出を三回ずつ行ない、
理非を判断し、
裁許状を発給した。裁許に対する
再審請求の訴えを
越訴(おっそ)状という。
(3)
近世になると願書の形式をとり、書出しは「乍恐書付を以御訴訟申上候」、書止めは「乍恐可奉申上候、以上」などと記したものが多く、
日下に差出人名を記し、宛名を明記している。したがって内容によって願書と訴状の区別をすることになる。
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デジタル大辞泉
「訴状」の意味・読み・例文・類語
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訴状【そじょう】
訴えの提起に際し,第一審裁判所に提出する書面(民事訴訟法133条)。ただし,簡易裁判所では口頭の提起も認められる。訴状には,紛争当事者,法定代理人を表示するとともに,原告の権利主張(請求)および紛争の実情を〈請求の趣旨〉と〈請求の原因〉に分けて記載するほか,準備書面の記載事項を記載し,この紛争解決のための手数料として,一定額の印紙をはる。
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そじょう【訴状】
日本の古文書の一様式。一般に,自己の権利の正当性とその他者による侵害の排除を訴えて,上級の人格または機関に提出する上申文書。とくに中世,訴人(原告)が朝廷,幕府,本所などの裁判機関に提出した訴状が重要である。陳状とあわせて訴陳状という。その書式は,本来は解状の形式をひくが,多く書出しに〈某謹言上〉〈某謹訴申〉と記し,書止めに〈仍粗言上如件〉〈訴申如件〉などと記す申状の形式をとり,論人(被告)の名,対象となる物権や事柄,副進される証拠文書,訴訟理由などが列記される。
そじょう【訴状】
民事訴訟を提起する際に原告が管轄第一審裁判所に提出しなければならない書面(民事訴訟法113条1項)。これに対し,刑事訴訟で検察官が公訴を提起する際に裁判所に提出する文書は,起訴状と呼ばれる。訴えの提起には,訴状に法定の事項を記載し(民事訴訟法133条2項),その作成者である原告またはその代理人が署名(または記名)押印し(民事訴訟規則2条),〈民事訴訟費用等に関する法律〉により訴額に応じた収入印紙をはり,被告の数だけの副本を添えて管轄裁判所に提出しなければならない。
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訴状
そじょう
裁判機構に対して訴訟をおこした者が提出する上申文書。公式令(くしきりょう)に定める上申文書の様式である解(げ)の系譜を引くもので,そのため充所(あてどころ)が書かれない場合が多い。用紙は原則として竪紙(たてがみ)を用いた。鎌倉幕府の訴訟制度では,訴状を受理した奉行人は,これに署判を加えて訴えられた相手方に下し,反論の上申文書(陳状(ちんじょう))を提出させ,これを3回くり返した。1回目の訴状を本解状(ほんげじょう),2回目・3回目の訴状をそれぞれ二問状・三問状とよんだ。
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訴状
そじょう
Klageschrift
民事訴訟法上,訴えの提起に際して裁判所に提出される書面。当事者,法定代理人,請求の趣旨および原因が記載されなければならない。訴状が提出されると,受訴裁判所の裁判長が必要的記載事項の有無を審査し,欠缺があればその補正を命じる。もし原告がこの補正命令に応じず欠缺が補正できない場合は,裁判長は命令をもって訴状を却下する。訴状が適式であれば,被告に送達され,訴訟手続が進められる。
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普及版 字通
「訴状」の読み・字形・画数・意味
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世界大百科事典内の訴状の言及
【裁判】より
…守護大名,戦国大名,国人の裁判のなかには〈調停〉の意味が濃い場合があり,近所之儀などと称される紛争解決原理となっている。重要なことは,中世では訴えが提起されたとき,裁判権者がその訴えに理ありと認めればただちに判決する手続(入門(いりかど)という)があり,訴状の右余白に承認文言を記す(外題(げだい))ような解決法があり,被告がこれに承服しないとき初めて理非の審理に入る方向が生ずる。鎌倉幕府下で緻密詳細な訴訟=裁判の手続法が展開するのは,中世の裁判の一側面なのであり,すべてをおおうものではない。…
【所務沙汰】より
…
[訴訟手続]
原告を訴人,被告を論人,訴象対象地を論所という。訴人は訴状を提出し,問注所の所務賦(しよむのくばり)という担当奉行が形式的な要件の欠陥を審査したうえで受理し,賦双紙(くばりそうし)という帳簿に登録し,訴状(申状ともいう)に銘を加え(折りたたんだ訴状の端の裏の部位に案件を示す見出しと年号月日の数字を書くこと),引付方に送付して,訴が裁判所に係属したことになる。訴状が受理されると,裁判所は論人あてに問状(といじよう∥もんじよう)を発して答弁を求める。…
【返答書】より
…江戸幕府の民事裁判手続(出入筋(でいりすじ))における被告(相手方)の答弁書。訴状(目安(めやす))に裁判所の裏書(目安裏書,目安裏判(うらはん))が与えられ,これが原告(訴訟人)の手によって相手方のもとに送達されると,相手方は目安の内容に対する反駁を書面に記して裁判所に提出しなければならない。この書面が返答書で,通常は〈差日(さしび)以前着届(ちやくとどけ)〉(出廷期日の前に出府,到着した旨の届出)の際に目安とともに提出する。…
※「訴状」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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