六訂版 家庭医学大全科 「副鼻腔嚢胞」の解説
副鼻腔嚢胞
ふくびくうのうほう
Paranasal sinus cyst
(鼻の病気)
どんな病気か
副鼻腔(
広義の副鼻腔嚢胞には、多くの種類の疾患が含まれますが、そのうち副鼻腔
原因は何か
副鼻腔嚢胞全体では、3分の2が術後性、3分の1が原因不明といわれています。術後性上顎嚢胞は、文字どおり術後に発症することが圧倒的に多く、初回の上顎洞手術の15~20年後に最も多いといわれています。
症状の現れ方
多くの場合、経過が極めてゆっくりなため、症状を自覚するのは相当進行してからです。ただし、嚢胞に感染が加わった場合、急速に発症することがあります。
症状は嚢胞ができる部位により違います。前頭洞に発生したものでは、眉付近のはれや眼の症状が多くみられます。すなわち、眼の動きが悪くなったり、はれたり、物が二重に見えたりする症状です。一方、上顎洞に発生したものでは、眼の症状のほかに、頬の痛み、はれが現れます。
検査と診断
これまでに副鼻腔の手術(ほとんどの場合は
治療の方法
嚢胞が感染を起こしている時(急性増悪期)には、抗菌薬を投与します。嚢胞の根本的な治療としては手術が主体です。現在では、どこも切開せずに、鼻の穴から内視鏡を入れて手術を行う方法(ESS)が一般的です。とくに、篩骨洞、蝶形骨洞の嚢胞ではその適応となります。
前頭洞でも内視鏡手術が多くなってきましたが、眉の下縁を切開して行う手術法もあります。上顎洞でも内視鏡手術が主体となりつつありますが、歯肉の上方を切開する手術法もあります。
いずれの手術法も嚢胞を全部摘出するのではなく、広く鼻腔に開放しようとする手術です。入院期間は7~10日程度です。手術後の再発率は5~10%といわれています。
病気に気づいたらどうする
前述の症状があれば、耳鼻咽喉科専門医への受診をすすめます。とくに以前慢性副鼻腔炎(蓄膿)の手術をした人は、この病気の可能性があります。視力障害を伴う場合は緊急を要するので、早急に受診することが必要です。
河田 了
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報