即・則・乃(読み)すなわち

精選版 日本国語大辞典 「即・則・乃」の意味・読み・例文・類語

すなわち すなはち【即・則・乃】

[1] 〘名〙
① (多く連体修飾語を受けて) ある動作の終わったその時。途端
万葉(8C後)八・一五〇五「霍公鳥(ほととぎす)鳴きし登時(すなはち)君が家に行けと追ひしは至りけむかも」
※花鏡(1424)時節当感事「すは声を出すよと、諸人一同に待ち受くるすなはちに、声を出すべし」
② 過去のある時をさす。その時。当時。
落窪(10C後)三「爰にはすなはちより、御夜中暁の事も知らでやと歎き侍りしかど」
方丈記(1212)「おびたたしく震(ふ)る事は、しばしにて止みにしかども、その余波(なごり)、しばしは絶えず。〈略〉すなはちは、人みなあぢきなき事をのべて、いささか心の濁りもうすらぐと見えしかど」
[2] 〘接続〙
① 前の事柄を受け、その結果として後の事柄が起こることを示す。文中にあっては、「…ば、すなわち」と条件句を受ける形で用いられることもある。そこで。そうなると。それゆえ。
書紀(720)欽明一六年二月(北野本南北朝期訓)「天皇聞しめして傷恨みたまふ。迺(スナハチ)使者を遣して津に迎へて慰め問はしむ」
徒然草(1331頃)八五「狂人の真似とて大路を走らば、則狂人なり」
② 前の事柄を受け、後の事柄を言い出す時に軽く添える。さて。ここに。そして。
去来(推定)宛芭蕉書簡‐元祿七年(1694)九月一〇日「則板之事申遣し候間、慥(たしか)成便に此書状江戸へ急便に頼存候」
③ 前の事柄に対し、後の事柄で説明や言い換えをすることを示す。つまり。いいかえると。ということは。
古今(905‐914)仮名序「近き世に、その名聞えたる人は、すなはち僧正遍昭は、歌のさまはえたれども、まことすくなし」
※読本・雨月物語(1776)菊花の約「只栄利にのみ走りて士家の風なきは、即(スナハチ)尼子の家風なるべし」
[3] 〘副〙
① 即座に。すぐに。
※書紀(720)神武(寛文板訓)「時に武甕雷神登(スナハチ)高倉に謂て曰く」
※仮名草子・伊曾保物語(1639頃)中「ある時、獅子王・羊・牛・野牛の四つ〈略〉いのししに行きあひ、則是を殺す」
② その所、または、その時にちょうどあたって。まさに。
平家(13C前)八「狩衣のくびかみにさすとおもひつる針は、すなはち大蛇ののうぶへにこそさいたりけれ」
[補注]本来、ある時を示す名詞であったが、「即」「乃」「便」「則」「輒」などの訓読語として用いられたことで、それらの語の元来の意味用法をも併せ持つようになったと思われる。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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