原子力発電所事故(読み)げんしりょくはつでんしょじこ(その他表記)atomic plant accident

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「原子力発電所事故」の意味・わかりやすい解説

原子力発電所事故
げんしりょくはつでんしょじこ
atomic plant accident

原子力発電所内の放射性物質に関連する事象のうち,放射性物質の放出の影響が大きいもの。原子力発電所内には原子炉をはじめとして多くの放射性物質が蓄積されており,その制御が不確実になれば原子炉外,あるいは発電所外へ放出される危険性がありうる。特に,原子炉内の核分裂で発生する熱の制御が不可能になれば,原子炉の破壊につながり放射性物質の放出は不可避となる。原子力利用施設で起こった事象に対する世界共通の評価尺度として,国際原子力機関 IAEA経済協力開発機構・原子力機関 OECD・NEAが策定した国際原子力事象評価尺度 INESでは,施設外への放射性物質の放出,施設内への影響,施設の安全防護機能の劣化という三つの基準から,安全上重要ではないレベル0からもっとも深刻なレベル7まで 8段階に事故・故障を分類している。このうち,レベル4以上は「事故 accident」とされ放射性物質の外部への放出と施設外一般人への放射線被曝,原子炉炉心の損傷,従業員の致死量被曝という条件をすべて含む。レベル1からレベル3までは「異常な事象 incident」とされ施設外への影響は大きくないものの,施設内への影響や原子力の安全防護への信頼性を失うという意味では決して軽視できるものとはいえない。
これまでに起こった事故のうちでは,冷却水漏れ(→一次冷却材冷却材)やポンプ・タービンの故障などで核分裂による熱発生と炉心冷却のバランスが崩れ,炉心の燃料が溶融し原子炉破損などを引き起こした燃料溶融事故が最悪のもので,ソビエト連邦(→ウクライナ)のチェルノブイリ原子力発電所事故(1986)=レベル7,イギリスのウィンズケール原子力発電所事故(1957)=レベル5,アメリカ合衆国のスリーマイル島原子力発電所事故(1979)=レベル5がある。日本では,福島第一原子力発電所事故(2011)=レベル7,美浜原子力発電所 2号機の蒸気発生器伝熱管損傷事故(1991)=レベル2,高速増殖炉もんじゅ二次系ナトリウム漏洩事故(1995)=レベル1などのほか,原子力発電所の事故ではないがジェー・シー・オー臨界事故(1999)=レベル4がある。

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