改訂新版 世界大百科事典 「取替問題」の意味・わかりやすい解説
取替問題 (とりかえもんだい)
replacement problem
対象物を取り替える際の問題(たとえば最も効率的な取替時期や取替方法を求める問題)をいい,オペレーションズリサーチの研究対象の一つ。取替問題の中には,小売店における陳列商品の取替え,研究テーマの打切り時期の決定(テーマの取替え),ある仕事の担当者の取替え,故障しやすい機械部品の取替え,しだいに劣化する設備の取替えなど大小さまざまの問題があるが,普通は機械部品や設備の取替問題を指す。本項目では以下で機械部品や設備の取替問題について述べる。
機械や装置の中に故障しやすい部品があるときには,(1)そのような部品が故障してから取り替える方式(事後取替え)と故障する前の適当な時期に取り替える方式(事前取替え)のどちらがよいか,(2)故障原因となる個々の部品を個別に事前取替えするのと一括して事前取替えするのとどちらがよいか,(3)点検や小修理をどのように混ぜるか,(4)それらの最適時期をどのように決めたらよいか,などの問題が生じる。事前点検の可能性や予備機の有無,部品費や停止損失額の大小,その他さまざまの要因が取替時期の決定に影響を及ぼすので,一般に理論的解析はかなり困難で未解決の問題が多い。具体的問題の解析にはシミュレーション法がよく使われる。
機械や装置を使用するにつれて機能がしだいに劣化し,動力・光熱費などの運転費,故障発生率,修繕費,製品の不良率などがしだいに増加したり,技術進歩により相対的な機能低下などが生じる場合には,現在使用中の機械や装置をいつ新品に取り替えるのがよいかを決める問題が生じる。タクシーやトラックのようにせいぜい数年で取り替え,しかもその間の技術進歩がそれほど著しくない場合には理論的解析は比較的容易である。いわゆる〈経済寿命〉の理論はこれを扱っている。しかしながらコンピューターのように顕著な技術進歩が進行中の機器や,旅客用航空機やオイルタンカーなどのように取替間隔の長いものは,たとえ技術進歩が顕著でなくてもそれを無視することはできない。このような取替問題の解析に当たって最大の難点は進歩の予測であるが,大まかな予測が可能な場合にはMAPI(machinery and allied products institute)方式その他の理論がある。
執筆者:千住 鎮雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報