1988年に登録された世界遺産(文化遺産)で、メキシコのユカタン半島北部の密林の中にある。古代マヤ文明の都市チチェン-イッツァは、5世紀の半ばに築かれた。7世紀末に一度滅びたものの、11世紀にマヤとトルテカの二大文明が融合する都市として復興し、13世紀頃まで栄えた。そのため遺跡は、トルテカ文明の影響を受ける以前の南側の地域を旧チチェン、それ以後の北側の地域を新チチェンと分けて呼ばれている。チチェン-イッツァは、マヤ語で「泉のほとりの水の魔術師」を意味し、「セノーテ」と呼ばれる天然の泉を中心に発展した。旧チチェンには、円筒形の建物「カラコル」(スペイン語で「カタツムリ」の意)と女子修道院が残っている。カラコルは天体観測所であり、女子修道院は宮殿として使われていたとされる。新チチェンには、頂上部にククルカンの神殿がある9層のピラミッド「エル・カスティーリョ」、球戯場、生け贄の心臓が供えられたというチャクモール像などがある。エル・カスティーリョは「暦ピラミッド」とも呼ばれる。これらの建築物や像は、古代マヤ文明の特徴を示すものであり、そうした重要な文化遺産であることが評価され、世界遺産に登録された。◇英名はPre-Hispanic City of Chichen-Itza