竹下登内閣(読み)たけしたのぼるないかく

日本大百科全書(ニッポニカ) 「竹下登内閣」の意味・わかりやすい解説

竹下登内閣
たけしたのぼるないかく

(1987.11.6~1989.6.3 昭和62~平成1)
自由民主党竹下登首班として成立した内閣。1987年(昭和62)11月に中曽根康弘(なかそねやすひろ)総裁裁定により竹下登が自民党総裁に就任し、国会での首班指名を受けて内閣が発足自民党内最大派閥(経世会=竹下派)を率いた内閣ということで長期政権と期待された。内政面では「ふるさと創生」推進と税制改革を中心とし、外交では貿易摩擦などの解消をねらった内需拡大、経済機構改革などを掲げ、国民に対しては「協力とがまん」を呼びかけた。1988年から1989年(平成1)にかけて地方交付税として全国の市町村に一律1億円を支給する「ふるさと創生事業」を行った。また1988年12月には野党世論の反対を押し切って消費税導入を柱とする税制改革関連法案を成立させた。外交面では、1987年12月にフィリピンで開かれた日本・ASEAN(アセアン)首脳会議、1988年1月の日米首脳会談、2月の大韓民国(韓国)大統領就任式への出席、4月のヨーロッパ4か国訪問、5月の国連軍縮特別総会出席、6月のトロント・サミット出席と活発な首脳外交を展開、牛肉・オレンジの輸入自由化など日米間の貿易摩擦問題の解消に努めた。しかし税制改革関連法案の審議中に発覚したリクルート疑惑で閣僚が辞任し、1988年12月に改造内閣を発足させたが、リクルート疑惑の拡大と消費税導入に対する国民の不満が拡大し、世論調査での内閣支持率が4%弱にまで低下するなか、1989年6月3日に内閣総辞職に追い込まれた。わずか1年7か月の短命政権であった。

[伊藤 悟]

『時事通信社政治部著『竹下総理「全データ」』(1987・時事通信社)』『マスコミ研究会編『ザ・竹下政権――自民党派閥・族の内幕』(1988・国会通信社)』『後藤謙次著『竹下政権・五七六日』(2000・行研)』

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百科事典マイペディア 「竹下登内閣」の意味・わかりやすい解説

竹下登内閣【たけしたのぼるないかく】

1987年11月6日〜1989年6月3日。自由民主党単独内閣。竹下登首相は所信表明演説で〈ふるさと創生論〉〈間接税導入〉を強調。1988年5月奥野誠亮(せいすけ)国土庁長官が盧溝橋(ろこうきょう)事件は偶発的と発言,中国,韓国で問題化し辞任。11月リクルート事件の疑惑解明のため衆議院に特別委が設置される。同月〈ふるさと創生〉政策のため全市町村に一律1億円の交付金配付が決定。12月リクルート疑惑に関する宮沢喜一蔵相の答弁が一定せず,辞任に追いこまれる。1989年1月昭和天皇死去,平成と改元。4月消費税(3%)が実施される。同月中国の李鵬(りほう)首相が来日。同月竹下首相が予算成立後の退陣を表明,後継に伊東正義(自民党総務会長)を推す声が高かったが,伊東総務会長は固辞。6月宇野宗佑(そうすけ)外相が自民党総裁に選出され,竹下内閣は総辞職。
→関連項目小泉純一郎

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「竹下登内閣」の解説

竹下登内閣
たけしたのぼるないかく

自民党の竹下登を首班とする内閣(1987.11.6~89.6.3)。中曾根前首相により自民党後継総裁に指名された竹下が組閣。大平内閣以来の懸案であった税制改革について,一般消費税の導入を多くの反対を押し切って実施。外交面では,アメリカがスーパー301条をもりこんだ新通商法を可決するなど日米経済摩擦が激化するなかで,建設,牛肉・オレンジ,その他の分野での市場開放や次期支援戦闘機の機種選定問題などの難問にとりくみ,対米摩擦の緩和に努めた。党内最大の派閥を擁し,調整力をもつ竹下に率いられ,実行力を期待されたが,リクルート事件をめぐる疑惑,金権政治の体質を問われ比較的短命で退陣した。

出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報

旺文社日本史事典 三訂版 「竹下登内閣」の解説

竹下登内閣
たけしたのぼるないかく

竹下登(1924〜2000)を首班とする自由民主党内閣(1987.11〜89.6)
内政では「ふるさと創生」政策を推進する一方,1989年から消費税(税率3%)を実施した。また同年1月,昭和天皇の崩御に伴い,年号を平成と改元した。外交では牛肉・オレンジ自由化などで日米貿易摩擦の緩和につとめ,政府開発援助(ODA)で対外関係改善に成果をあげた。しかし,リクルート事件をめぐる疑惑に消費税に対する国民の不満などが重なり,1年7か月の短命内閣に終わった。

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