日本大百科全書(ニッポニカ) 「高良留美子」の意味・わかりやすい解説
高良留美子
こうらるみこ
(1932―2021)
詩人。東京生まれ。東京芸術大学、慶応義塾大学中退。学生時代は文学運動誌『希望』に参加し、『詩組織』、「現代詩の会」などを拠点として活動した。詩集に『生徒と鳥』(1958)、『場所』(1962。第13回H氏賞受賞)、『見えない地面の上で』(1970)、『恋人たち』(1973)などがある。ことばの「アプリオリな情感や生理を排除」し、「存在の全体への要求と欲求へみずからを転化」(「言葉ともの」)する試みにより、堅固なことばの世界を構築。評論集に『物の言葉』(1968)、『文学と無限なもの』(1972)がある。
1980年代以降も、詩、小説、評論と幅広く活躍する。詩集では、『しらかしの森 詩集』(1981)、1988年度(昭和63)現代詩人賞受賞の『仮面の声』(1987)、『高良留美子詩集』(1989)、2000年度(平成12)丸山豊記念現代詩賞受賞の『風の夜 詩集』(1999)など。そしてTBSテレビで放映された『神々の詩(うた)』を同タイトルで単行本化した(1999)。1980年代以降、アジアやアフリカへの関心を強め、訳詩集『アジア・アフリカ詩集』(1982。新装版・1998)や『アジア・アフリカ文学入門』(1983)を著している。小説に『発(た)つ時はいま 連作長編』(1988)、『時の迷路・海は問いかける』(1988)など、評論集に『女の選択――生む・育てる・働く』(1984)、『母性の解放』(1985)、『いじめの銀世界』(1992)、さらに『高群逸枝(たかむれいつえ)とボーヴォワール』(1976)などこれまでの評論集を集めた『自選評論集 高良留美子の思想世界』全6巻(1992~1993)がある。また、明治期から第二次世界大戦までに刊行された女性による評論・ルポルタージュ・エッセイ等を集成した『女性のみた近代』(第1期全25巻。2000~2004)を、岩見照代(1946― )共編、原ひろ子(1934―2019)監修で刊行した。同シリーズは、1902年(明治35)刊の『鉱毒地の惨状』や神近市子(かみちかいちこ)『現代婦人読本』、高群逸枝『私の生活と芸術』、人見絹枝『女子スポーツを語る』など、全25巻で構成されている。
映画のシナリオも手がけ、1965年の吉田喜重(よししげ)監督『水で書かれた物語』(石坂洋次郎原作)では、石堂淑朗(としろう)(1932―2011)、吉田喜重とともに脚本を担当した。この作品は、1965年度キネマ旬報ベストテンに選ばれた。2001年には、「平塚らいてうの記録映画を作る会」を青木生子(たかこ)(1920―2018)、一番ケ瀬康子(1927―2012)、落合恵子(1945― )、高野悦子(1929―2013)らと設立、『平塚らいてうの生涯――元始、女性は太陽であった』(自由工房製作、財団法人東京女性財団助成作品)を企画した。夫の竹内泰宏(やすひろ)(1930―1997)は、作家、文芸評論家。
[首藤基澄]
『『物の言葉――詩の行為と夢』(1968・せりか書房)』▽『「吉本隆明」(「現代の眼」編『戦後思想家論』所収・1971・現代評論社)』▽『『高良留美子詩集』(1971・思潮社)』▽『『文学と無限なもの』(1972・筑摩書房)』▽『『恋人たち』(1973・山梨シルクセンター出版部)』▽『『高群逸枝とボーヴォワール』(1976・亜紀書房)』▽『『しらかしの森 詩集』(1981・土曜美術社)』▽『『アジア・アフリカ文学入門』(1983・オリジン出版センター)』▽『『女の選択――生む・育てる・働く』(1984・労働教育センター)』▽『『母性の解放』(1985・亜紀書房)』▽『『仮面の声』(1987・土曜美術社)』▽『『発つ時はいま 連作長編』(1988・彩流社)』▽『『時の迷路・海は問いかける』(1988・オリジン出版センター)』▽『『高良留美子詩集』(1989・土曜美術社)』▽『「原始共同体の女性像」(富山妙子編『時代を告げた女たち――20世紀フェミニズムへの道』所収・1990・柘植書房)』▽『『いじめの銀世界』(1992・彩流社)』▽『『自選評論集 高良留美子の思想世界』全6巻(1992~1993・お茶の水書房)』▽『『風の夜 詩集』(1999・思潮社)』▽『『神々の詩』(1999・毎日新聞社)』▽『高良留美子編・訳『アジア・アフリカ詩集』(1998・土曜美術社)』▽『原ひろ子監、高良留美子・岩見照代編『女性のみた近代』第1期全25巻(2000~2004・ゆまに書房)』▽『麻生直子著『現代詩人論叢書4 現代女性詩人論――時代を駆ける女性たち』(1991・土曜美術社)』▽『藤本英二著『国語教育叢書21 現代詩の授業』(1993・三省堂)』▽『埴谷雄高著『埴谷雄高対話集 超時と没我』(1996・未来社)』▽『堀場清子著『習俗打破の女たち』(1998・ドメス出版)』