名誉法(読み)めいよほう(英語表記)ius honorarium

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「名誉法」の意味・わかりやすい解説

名誉法
めいよほう
ius honorarium

古代ローマにおいて,告示発令権を有していた政務官が,法的,経済生活的実情を考慮して,公益観点から旧来の市民法を補完し,修正するために導入した法。名誉官法ともいわれる。政務官の別に応じて,法務官法,高等按察官法,属州長官および財務官の告示に基づく属州法などがあるが,最も重要なのは法務官法である。高等按察官は市場での取引に関して告示を出し,属州長官および財務官は,それぞれ法務官および高等按察官の告示を採用して属州内の裁判を管掌した。これらの政務官職はいずれも名誉職であったので,一般に政務官の告示によって成立した法を「名誉法」ないしは「名誉官法」と呼んだ。名誉法は,市民法が実体法的なものであるのに対して,訴訟法的保護手段の体系である点に大きな特徴がある。名誉法の形成はユリアヌス編纂の『永久告示録』 Edictum perpetuum (130頃) により実質的に終了した。

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百科事典マイペディア 「名誉法」の意味・わかりやすい解説

名誉法【めいよほう】

ローマ法史第2期(前3世紀後半以降)の法で,市民法に対して,法務官その他の政務官の訴訟指揮に基づく法体系の総称古来形式主義的な市民法が社会発展に対応できなくなった中で,市民法を補充・修正するために形成された。告示という形式で発せられたが,そこには学説反映が色濃く,信義誠実,悪意などの考え方はこの中から生まれた。
→関連項目ローマ法

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世界大百科事典(旧版)内の名誉法の言及

【ローマ法】より


【第2期】

[共和政後期]
 前3世紀よりすでにローマは地中海通商の中心に立つこととなり,ローマ人にのみ適用となる厳格な形式主義の市民法では法的問題の処理は不可能となっていった。このため,とりわけ第2次ポエニ戦争の終了後,共和政期を通じて,法務官(プラエトル)は,従来の市民法を〈援助,補充,改廃する〉ために名誉法(法務官法)を積極的に発展させてこれに対応した。すなわち,前367年インペリウム(命令権)保持者として設置された法務官は訴訟掌理権jurisdictioを有し,前242年新たに設置された外人係法務官とともに,原則としてローマの訴訟すべて(ただし市場秩序に関する高等按察官の管轄は除く)について法廷手続を担当するものであった。…

※「名誉法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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