訴訟指揮(読み)そしょうしき

日本大百科全書(ニッポニカ)「訴訟指揮」の解説

訴訟指揮
そしょうしき

民事訴訟法上、訴訟の審理が適法かつ能率的に、完全に行われるようにするために裁判所または裁判官に認められた権能を訴訟指揮権といい、これを行使する行為を訴訟指揮という。その内容は多岐にわたるが、おもなものとして以下をあげることができる。

(1)訴訟の進行に関するもの(期日の指定、期間の伸縮、手続の中止など)
(2)弁論等の整理に関するもの(口頭弁論の指揮)
(3)審理方法の整理に関するもの(弁論の制限・分離・併合、弁論の再開)
(4)事案の解明に関するもの(釈明、時機に後れた攻撃防御方法の却下)
 訴訟指揮を行う主体は原則として裁判所であるが、具体的には、直接、裁判所として行動する場合(民事訴訟法151条~155条)、合議体のとき裁判長が独立して行う場合(同法93条1項・137条など)、裁判長が合議体を代表して行う場合(同法148条~150条)、さらに、受命・受託裁判官が行う場合(民事訴訟規則35条)がある。訴訟指揮の形式からすると、事実上の行為、裁判(決定・命令)がある。この裁判は、いつでも取消し・変更できる(民事訴訟法60条2項・120条など)。また、訴訟指揮は、裁判所の合目的性の考慮によりなされるが、当事者の利害にとくに関係深いものについては、当事者の申立権が認められており(同法17条・18条・149条3項など)、これらの場合には、申立てがあれば、裁判所はなんらかの応答をしなければならない。

 刑事訴訟法上は、ほぼ民事訴訟法におけるのと同様である。

[本間義信]

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精選版 日本国語大辞典「訴訟指揮」の解説

そしょう‐しき【訴訟指揮】

〘名〙 訴訟が能率的に行なわれるよう監視し処置する、裁判所、裁判長または裁判官の権能。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「訴訟指揮」の解説

訴訟指揮
そしょうしき
Prozessleitung

訴訟の適正かつ迅速な処理と審理の完全を期するために訴訟手続を主宰する裁判所の行為。 (1) 民事訴訟における訴訟指揮の権能は,原則として裁判所に属する (民事訴訟法) 。特別の規定により,裁判長受命裁判官が裁判所を代表して行使する場合と裁判長が独立して行使する場合とがある。訴訟指揮は事実行為あるいは裁判 (決定命令) の形式でされるが,その裁判には羈束力はない。訴訟指揮の行為のおもなものとしては,期間の指定,変更,期間の伸縮,弁論の指揮,弁論の制限・分離・併合,弁論の再開,釈明権の行使,釈明処分などがある。 (2) 刑事訴訟上の訴訟指揮の権能は,特別の規定のある場合を除き,包括的に裁判所の代表機関である裁判長に属する (刑事訴訟法) 。その権限はきわめて広範にわたり,訴訟を秩序づけ合理的に進行させるために必要な事項一切に及ぶ。ただし,当事者は,裁判長の訴訟指揮に関する処分に対して異議を申し立て,裁判所の監督権の発動を求めることができる。裁判所に留保されている訴訟指揮上の権限としては,証拠調べの範囲,順序,方法の決定,変更,証人尋問の順序の変更,起訴状記載の訴因変更などの命令,許可,弁論の分離・併合・再開である。

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世界大百科事典 第2版「訴訟指揮」の解説

そしょうしき【訴訟指揮】

訴訟を適切に運営するために認められた権能を訴訟指揮権という。その権能の行使が訴訟指揮である。訴訟を迅速かつ公平に運営するために,この権能は裁判所に与えられている。これを職権進行主義(職権主義の一局面)といい,当事者進行主義(当事者主義の一局面)に対立する概念である。しかし職権主義を強調すると,当事者の訴訟活動が萎縮し,こわい裁判所というイメージにつながりやすい。そこで民事訴訟法は,訴訟指揮権を原則として裁判所に属するとしながら(148~158条),裁判長に対する発問の申立てまたは異議に関する規定をもうけ(149条3項,150条,90条),適切な訴訟指揮を求めたり,違法な訴訟指揮の是正を求めたりする権能を当事者に与えている。

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