呼ばう(読み)ヨバウ

デジタル大辞泉 「呼ばう」の意味・読み・例文・類語

よば・う〔よばふ〕【呼ばう/喚ばう】

[動ワ五(ハ四)]《動詞「よ(呼)ぶ」の未然形接尾語「ふ」から》
呼びつづける。何回も呼ぶ。
「『行徳!』と―・って入って来て勝手口へ荷をおろす出入の魚屋の声も」〈藤村・桜の実の熟する時〉
(「夜這う」「婚う」とも書く)言い寄る。求婚する。また、女の所へ忍んで通う。
「女のえ得まじかりけるを年を経て―・ひわたりけるを」〈伊勢・六〉

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精選版 日本国語大辞典 「呼ばう」の意味・読み・例文・類語

よば‐・う‥ふ【呼う・喚う】

  1. [ 1 ] 〘 自動詞 ハ行四段活用 〙 ( 動詞「よぶ(呼)」の未然形に、反復継続を表わす助動詞「ふ」の付いたもので、古くは連語 ) 呼び続ける。繰り返し叫ぶ。大声に叫び呼ぶ。
    1. [初出の実例]「反側(こいまろ)ひ呼(ヨハヒ)(おら)ひて頭脚(あとまくら)往還(かよ)ふ」(出典:日本書紀(720)雄略即位前(前田本訓))
    2. 「なくなくよばひ給ふ事、千度ばかり申し給ふけにやあらん」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
  2. [ 2 ] 〘 他動詞 ハ行四段活用 〙
    1. [ 一 ]に同じ。
      1. [初出の実例]「声を高く挙て妻を喚(よば)ふに、妻、更に不答ず」(出典:今昔物語集(1120頃か)九)
    2. ( 婚・夜這 ) 言い寄る。求婚する。女のもとに忍んで通う。特に、夜、男が女の寝所に忍び入って情を通じる。
      1. [初出の実例]「高姓の人伉儷(ヨバ)ふに、猶辞(いな)びて年祀(とし)を経たり〈国会図書館本訓釈 伉儷 二合与波不二〉」(出典:日本霊異記(810‐824)中)
      2. 「をとこ、武蔵の国までまどひありきけり。さてその国に在る女をよばひけり」(出典:伊勢物語(10C前)一〇)

呼ばうの語誌

( 1 )本来は一般的な「呼び続ける」という動作を表わしていたのが、特定の場面、とりわけ女性に対して男性が呼び続ける例が多用されるにつれて、[ 二 ]の「求愛」「求婚」の意味が付与されたものか。
( 2 )伊勢物語‐六」に「よばひわたる」の例があり、この頃には、継続を示す「わたる」との複合形があるところから、この意味がかなり一般化していたことがうかがわれる。

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