(1)住宅において、玄関とは別に設けられた台所の出入口。表玄関の清潔さや厳しさを保持しようとすればするほど勝手口の使用頻度は高くなる。ここからごみが搬出され、洗濯物が出し入れされる。御用聞きのほか、近隣の人たちの通用口として、あるいは子供たちの出入口としても利用される。設置する場合は、電気、ガス、水道などのメーターを近くに集め、出入口の上に大きな庇(ひさし)を取り付けたほうがよい。また、冷風の吹き込むのを防ぐため、上半分のガラス部分を別の扉(ダッチドア)とするなどのくふうが望まれる。
(2)茶室で亭主の出入りする口。客が出入りする躙口(にじりぐち)に対する語で、茶道口、通い口ともいう。勝手口は水屋(みずや)(勝手)から点前座(てまえざ)へ進む入口であり、点前座から水屋へ戻る口であるから、点前座、もしくはそれに続く踏込畳(ふみこみだたみ)に設けられる。間取りによっては、給仕をするのに、茶碗(ちゃわん)を差し出すたいせつな場所を踏み越えなければ客座へ通れない場合があるが、このときは給仕口をあける。客人に急な用を告げたり、禿(かむろ)が出入りすることから、給仕口を禿口(かむろぐち)ともいう。あるいは勝手口と給仕口を別々にせず、二枚襖(ふすま)の口にして、一方をあければ茶道口、他方をあければ給仕口という手法をとることもある。形態としては、襖一本引きの方立口(ほうだてぐち)が一般的であるが、枠のない火灯(かとう)口とすることもある。運びのできる最小限の大きさということで、高さ5.1~5.2尺(1尺は約30.3センチメートル)、横2~2.1尺が標準である。
[中村 仁]
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