日本大百科全書(ニッポニカ) 「哲学の貧困」の意味・わかりやすい解説
哲学の貧困
てつがくのひんこん
Misère de la Philosophie, Réponse à la philosophie de la misère de M. Proudhon
マルクスが、プルードンの著作『経済的諸矛盾の体系、または貧困の哲学』(1846)に批判を加えた書物。初版は1847年にフランス語で刊行。以来マルクスとプルードンとの関係は断絶した。マルクスのプルードン批判は、プルードンが科学的弁証法の方法を把握せず、経済的カテゴリーを先在的な永遠の理念に仕立てあげる思弁哲学に陥り、経済学の知識が不十分で交換価値の理解が間違っており、社会問題の解決のための公式を先験的にひねり出すユートピア主義にたっている点に向けられている。結論として、マルクスは、無政府主義者プルードンのこの著作を「小ブルジョア社会主義の法典」と規定しているが、他方、この時代にすでにマルクスの史的唯物論ないし唯物弁証法が確立していたことを、この著作は示している。
[古賀英三郎]
『高木佑一郎訳『哲学の貧困』(大月書店・国民文庫)』