善鸞(読み)ぜんらん

精選版 日本国語大辞典 「善鸞」の意味・読み・例文・類語

ぜんらん【善鸞】

  1. 鎌倉前期の浄土真宗の僧。親鸞の子。号は慈信房。東国布教したが、親鸞の教えに異義を唱え、康元元年(一二五六)義絶された。生没年不詳。

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朝日日本歴史人物事典 「善鸞」の解説

善鸞

没年弘安9.3.6(1286.4.1)
生年:建保5(1217)
鎌倉中期の真宗の僧。親鸞の実子であり,派遣された関東で親鸞門弟と対立して,親鸞に義絶されたことで著名。親鸞と共に文暦のころ(1234~35)上京したが,建長年間(1249~56)に関東で起こった,どんなに悪い行いをしても往生の妨げにはならないとする,いわゆる「造悪無碍」の異義を正すために,親鸞の命により使者として下向。当初は精力的に教化活動を進めていたが,のちには自分ひとりが親鸞から伝授されたという虚偽の教えをひろめて教団を混乱させ,また領主や鎌倉幕府の権力を利用して性信ら関東教団の指導者を弾圧した。親鸞へは関東教団の混乱した様子を報告し,種々指示を得ていたが,門弟の真浄などから善鸞自身がその混乱を生み出している事実を知らされた親鸞に義絶され,教団から放逐された。その後の消息は明らかではないが,巫術(祈祷)を行ったようで,正応3(1290)年関東を訪れた本願寺覚如が病に臥していたとき,病封じの札を渡したという。親鸞からひとり伝授されたという教えの内容は定かではないが,その伝授のされ方には,後年隆盛する秘事法門的要素がみられる。そのような師弟の面授口訣を強調する立場は,如道の三門徒に継承され,三門徒系の真宗出雲路派山元派は善鸞を第2世に数える。生年に建暦2(1212)年,承元1(1207)年説があり,また没年にも正応5(1292)年と建治3(1277)年の説がある。<参考文献>『親鸞聖人御消息集』,乗専『最須敬重絵詞』,『本願寺通紀』

(草野顕之)

出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「善鸞」の意味・わかりやすい解説

善鸞
ぜんらん

生年不詳。没年も諸説があってはっきりしない。鎌倉前期の僧。親鸞(しんらん)の子。母は恵信尼(えしんに)。号は慈信房(じしんぼう)。「大谷一流系図」には宮内卿公(くないきょうのきみ)と号したとみえる。親鸞が東国を去ったのち、門弟間に異義が生じた建長(けんちょう)(1249~1256)の初め東国に下ったが、かえって親鸞の実子という地位を盾に、親鸞の正意と称して、第十八願を「しぼめる花」に例えた異義を唱え、また幕府要路者に働きかけて念仏弾圧を工作し、門弟たちを混乱に陥れたため、1256年(康元1)親鸞に義絶された。義絶後は巫覡(ふげき)の徒となったという。

[石田瑞麿 2017年8月21日]

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「善鸞」の解説

善鸞 ぜんらん

?-? 鎌倉時代の僧。
親鸞(しんらん)の子。母(継母とも)は恵信尼(えしんに)。親鸞の代理として京都から関東に派遣され布教にあたるが,異義をとなえて教団を混乱させたため,建長8年(1256)親鸞より義絶される。没年には弘安(こうあん)9年(1286)70歳,正応(しょうおう)5年(1292)82歳などの諸説がある。号は慈信房。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「善鸞」の意味・わかりやすい解説

善鸞
ぜんらん

[生]?
[没]正応5(1292)?
鎌倉時代の僧。浄土真宗の開祖親鸞の子。房号は慈信。真宗の教義を東国に広めようとしたが,誤った教えを人に伝えたとして親鸞から義絶された。

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世界大百科事典(旧版)内の善鸞の言及

【秘事法門】より

…秘密裏に伝受するためこの称がある。親鸞の子善鸞が東国の真宗信者に対して,親鸞から夜中ひそかに真実の教えを伝受されたと称したことに発するといわれる。南北朝時代に越前の大町如道は不拝秘事を唱えてこれを秘事法門と呼び,北陸を中心に広く普及するにいたった。…

※「善鸞」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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