朝日日本歴史人物事典 「嘉納治兵衛」の解説
嘉納治兵衛(5代)
生年:文政4.6.16(1821.7.15)
幕末維新期の酒造業者。灘(兵庫県)の有力な酒造家嘉納家5代。名は尚正。嘉納家の祖は近世初頭,摂津国御影村(兵庫県)の生魚屋治郎太夫。元禄5(1692)年分家して材木屋治兵衛を名乗り,当初材木業を営む。2代治兵衛長好のとき家督を長男治郎右衛門に譲り,長好は末子を連れて分家。両家ともに江戸積酒造業を始めるが,前者が本嘉納家,後者が白嘉納家となる。明和期に屋号を嘉納屋とし,酒造業に専業化して以後急成長をとげ,造石高1万石,10蔵を所有した。 4代治兵衛繹貴が天保12(1841)年49歳で急逝したあと,尚正が弱冠22歳で家督を相続し,明治3(1870)年までの29年間その経営に当たり,家業を盛りたてた。慶応3(1867)年より維新期にかけて兵庫商社世話役,楮幣方御用引替所,兵庫県市政局用達,通商司酒造取締などの要職についた。
(柚木学)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報