改訂新版 世界大百科事典 「四科十哲」の意味・わかりやすい解説
四科十哲 (しかじってつ)
Sì kē shí zhé
中国,孔子の高弟10人をいう。孔子の弟子は3000人もあり,そのうち六芸に精通した者が72人あったと伝えられるが,さらに最も傑出した人物については《論語》の先進篇に4科目に分けて,〈徳行には顔回(淵),閔子騫(びんしけん),冉伯牛(ぜんはくぎゆう),仲弓。言語(外交交渉の弁舌)には宰我,子貢。政事には冉有,季路。文学(学問)には子游,子夏〉と見える。徳行,言語,政事,文学の四つのカテゴリーは孔門の四科と呼ばれ,後世,人間の才能の表現のうち,最も重要なものとされる。また列挙された10人を孔門の十哲と呼ぶ。しかし,ここには孝行で有名な曾参(そうしん)が〈徳行〉の科になく,また子張や有若も抜けている。そのため,十哲は弟子の全部からではなく,孔子の陳蔡の旅に随行した者について選んだのだとする説がある。程顥(ていこう)(明道)は〈四科はすなわち夫子に陳蔡に従う者のみ,門人の賢なる者もとより此れに止まらず。曾子は道を伝えしに与からず。故に十哲は世俗の論たるを知るなり〉と言っている。
執筆者:日原 利国
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報