改訂新版 世界大百科事典 「回避制」の意味・わかりやすい解説
回避制 (かいひせい)
Huí bì zhì
中国の旧法制で,官僚を任用する際,ある条件の地位を避けさせる制度。廻避とも書き,大別して親族回避と本籍回避の2種があった。中国では古来から家族制度を重んじ,律においても近親間では互いに犯罪を隠匿することを容認したくらいであるから,こういう制度も自然に発達したのであろう。親族回避とは,親属関係にある者が同一の官庁に奉職できないことをいい,本籍回避とは,主として地方官がその本籍地の官にはつけないことをさす。前漢までは回避の制はなかったが,後漢の末に〈三互の法〉ができて,自分の本籍地のみならず姻戚の本籍地に官となることと,甲と乙とが同時に互いに相手の本籍地の州の官となることを禁じて以来,しだいに細かい規制が施行された。しかし時には老臣や勲臣を優遇させるために,わざと本籍地の地方官に任じて名誉を与えることもあったが,明・清時代には厳しい規制が行われた。とくに本籍回避については〈南北選〉と称し,教授,学正などの教官を別として,単に本籍地の州を避けるだけにとどまらず,北方人は南方に官となり,南方人は北方に官となるべきだとされた。したがって,その地方の民情風俗をよく知らぬ者が地方官に赴任することになり,弊害が大きかったようだ。なお裁判官については,原告または被告と親族・姻族でないこと,師弟の関係がないこと,讎隙(しゆうげき)がないこと,などの回避が行われた。
執筆者:礪波 護
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報