日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
国民生活に関する世論調査
こくみんせいかつにかんするよろんちょうさ
国民の生活に関する意識や要望を探り、行政の基礎資料とするための国の調査。現在の暮らしの満足度や向上感、所得・収入への満足度、今後の生活の見通し、生活のどこに力点を置いているか、生き方や考え方、家庭の役割、政府が力を入れるべき政策課題などについて聞いている。1958年(昭和33)からほぼ毎年実施しており、1974、1975、1976年には年2回実施し、1998年(平成10)と2000年(平成12)は調査がなかった。なお第1回の調査は1948年に実施され、それ以降1954、1955年と続いたが、現在の質問に近い形になったのは1958年からである。調査主体は内閣府の政府広報室で、一般社団法人・新情報センターおよび同・中央調査社に調査を委託している。全国の18歳以上の日本国籍をもつ男女から標本抽出した1万人を対象に、調査員による個別面接方式で実施。有効回収率は60%台が続いている。なお、かつては20歳以上が対象であったが、2016年から18歳以上に引き下げられた。調査は、(1)現在の生活について、(2)今後の生活について、(3)生き方、考え方について、(4)政府に対する要望について(この項目は1969年に追加)、の大きく4項目について聞いている。調査結果は政府の白書や審議会などの資料として活用されている。
同調査では、1960年代後半から生活程度に関する質問に対し「中の上」「中の中」「中の下」との回答率が8割を超え続けたため、1970年代には「中流意識」「1億総中流」ということばを生んだ。また2011年の東日本大震災後には、生活で強く意識することとして「節電に努める」との回答が6割近くに達し、「災害に備える」も4割を超えるなど、世相を敏感に反映する調査として引用されることが多い。
[矢野 武 2018年3月19日]