国家行政組織法などに基づき、法律や国の制度に関して学識経験者や法律専門家らが議論する会議。内閣府によると2017年8月時点で各省庁に計129ある。審議会には部会や分科会などの下部組織が連なり、各分野の詳細な政策を話し合う。政府の政策立案過程の一つとして活用されている。企業や業界団体が参加し、利害調整を図る場合もある。
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行政組織における諮問的な合議制の機関。大臣などの諮問に応じ,重要政策などについて調査審議を行い,その結果を助言,勧告するのが典型的なものである。同じく合議制の機関でも,それ自身が行政権を行使する行政委員会と異なり,その答申とか決議は法的拘束力をもたない。国または地方公共団体の行政機関に付属して設けられる。政策決定権者に対する諮問的合議制機関は社会の多様化・専門化を背景に各国で広く見られるようになり,日本でも第2次大戦前から委員会,審議会の名称で設置されていた。しかし,日本ではとくに戦後,国民が行政に直接に参加する制度の一つとして,行政民主化の視点から注目された。審議会は,行政への専門知識の導入,行政の公正の確保,利害の調整,各種行政の総合調整などを目的として設置される。これらの目的や合議制としての性格から,多かれ少なかれ独立的に審議などを行うものとされる。
現在,国の行政組織における審議会は法律によって設置される。これは行政組織に対する国会の統制を強めることおよび審議会の乱設を防止することを理由としていたが,制度が固定的にすぎるとの批判も行われている。また,法律によらずに閣議決定などによって同様のものが設けられることもあり,それらは〈懇談会〉などと称されることが多いが,実質的には審議会と変わらないといってよい。法律によって設置される審議会は必ずしも審議会と称されるとは限らず,協議会,審査会,調査会,委員会など異なる名称が付けられることがある。審議会の数は1982年現在200余である。審議会の委員数は少数のものから100名を超えるものまであり,委員の性格も審議会によって異なるが,学識経験者として任命される場合が多い。学識経験者として専門知識を求められたり,いわゆる中立的・調整的機能を期待されたりしているといえよう。そのほか,審議会により,利害関係者,関係行政機関職員などが委員となる。審議会には,(1)大臣などの諮問に応じて,あるいはみずから,重要政策などについて調査審議するもの(財政制度審議会など),(2)許認可,試験検定などについて,法の適用を公正にするため大臣などの決定に参加するもの(恩給審査会など)とがある。そして,後者の場合には行政委員会に近いものもありうる。
審議会についての問題点としては,(1)乱設の傾向,(2)行政機関による運用方法の問題などが指摘されている。審議会は決定を権威づけるために乱設されたりする傾向があるが,それについては1960年代半ば以降設置数が抑制されている。行政機関による運用方法については,行政機関の主導の下に議事を進め,その結果を審議会の名によって権威づけるとか,行政機関がその責任においてなすべきことを審議会を設置することで責任を回避するとか,審議会の答申を尊重しないとかの場合が指摘される。そして,これらについて,行政機関は審議会を〈隠れみの〉として用いているなどの批判もある。なお,諮問機関としての審議会は多くの国で設けられているが,とくにイギリスでは,利益集団と行政部との接触の場として,各省に設置されている各種の諮問機関が活用されている。こうした機関には,企業や組合などの各全国組織が代表を送っており,各利益集団の要求はこれらの機関をとおして政府に影響を与える。イギリスの場合,審議会は政治的統合の機関として重要な意味をもつ。
執筆者:橋本 信之
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審議会とは、行政機関が意思決定を行う際に意見を求める合議制の機関である。審議会は、国においては、省、委員会、庁に、法律の定める所掌事務の範囲内で、法律または政令の定めるところによって設置することができる(国家行政組織法8条)。法制審議会、中央教育審議会や電波監理審議会などがある。1983年(昭和58)の国家行政組織法改正以前では、法律によってのみ設置することができた。地方公共団体においては、地方公共団体の執行機関(長、委員会、委員)に付属機関として、法律または条例によって審議会を設置することができる(地方自治法138条の4第3項)。地方社会福祉審議会、都道府県都市計画審議会等がある。
審議会の意思決定(意見、答申)は、行政内部において意味をもつにとどまる。審議会は対外的決定権をもたない。この点で行政委員会とは異なる。審議会の意見(答申)が、意見を求めた行政機関を法的に拘束するかどうかによって、審議会は、諮問機関(法的拘束力をもたない)と参与機関(法的拘束力をもつ)に分類される。
また、法律または条例によって設置される審議会のほかに、国にあっても地方公共団体にあっても、「研究会」「懇談会」などとよばれる事実上の審議会が多用される。いわゆる「私的」諮問機関とよばれるものである。審議会についての問題点として、多面的な国民、住民参加を保障するシステムになっていないこと、委員の選任のあり方、行政の正当化機能に資する面があることなどが指摘されることも多い。
なお、審議会について、2001年(平成13)1月の中央省庁再編に伴い、活動の実績が乏しいもの、設置の必要性が著しく低下しているものは基本的に廃止する等の方針に基づいて整理・合理化が進められている(中央省庁等改革基本法30条参照)。たとえば、科学技術・学術審議会は、航空・電子等技術審議会、海洋開発審議会、資源調査会等科学・技術関係の6審議会の機能を整理統合して2001年1月文部科学省に設置され、経済産業省の産業構造審議会は、再編前の産業構造審議会、工業立地及び工業用水審議会、商品取引審議会等10の審議会を整理統合したものである。
[平田和一]
(新藤宗幸 千葉大学法経学部教授 / 2007年)
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…圧力団体活動の第3の側面は,対政府活動に見いだされるが,この活動は,20世紀における政治の積極化の進行とともに活発化し,ロビイングの重心は,立法ロビイングからしだいに行政ロビイングへと移ってきた。しかも,最近多くの国々で政府の審議会や調査会に圧力団体が代表者を委員として送り込むことが慣例化し,政府と圧力団体の関係は,制度的な基礎をも与えられるに至っている。このような事態がいっそう進んで,重要な政策的決定が,政府と経営者団体と労働組合の三者間の協議を前提条件とする傾向が顕著化してきたイギリスや西ドイツでは,〈ネオ・コーポラティズム〉的状況さえ指摘されている。…
…職務権限の性質に基づき分類された行政機関の一類型であって,一般に行政庁の行政活動や決定にあたって,当該行政庁に対し,その諮問に応じまたは自発的に調査審議し,参考となるべき意見を述べる権限を有する機関をいう。法制度上は,国の府省・委員会および庁に法律または政令により設置しうる審議会など(国家行政組織法8条。例,社会保障制度審議会,法制審議会,中央教育審議会,地方制度調査会など。…
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