最新 地学事典 「地殻応力問題」の解説
ちかくおうりょくもんだい
地殻応力問題
state-of-stress problem
地殻応力は,実験室で決められた多くの岩石の摩擦強度が示すように数百MPa以上に達するのか(高応力説),それともサンアンドレアス断層に沿って熱流量異常がほとんどないことから類推されたように2~30MPa以下にすぎないのか(低応力説),という学際的な論争。断層の摩擦強度が大きければ断層運動時により多くの摩擦熱が発生し,断層沿いに熱流量の異常が認められるはず。J.N.Brune et al.(1969)は,摩擦加熱と熱伝導の問題を解き,サンアンドレアス断層がほとんど強度をもたないこと,したがって大きな地殻応力は発生しないことを論じた。地殻応力問題は,この論文の発行以来,四半世紀の議論を経てもなお未解決。最近では,断層は弱いかもしれないが母岩は弱くないのではないか,断層にも強い断層と弱い断層があるのではないか,といわれているが確証はない。問題を解決するためには,断層岩類の構成鉱物と変形機構の解明,断層のレオロジー(特に,圧力溶解による変形,化学反応の変形への影響)の研究,地殻内物質大循環の実体とその変形・熱流量への影響に関する学際的な研究が望まれる。プレートの相互作用の大きさ・断層の力学モデルの確立・地殻内大地震の発生機構の解明などの問題は,地殻応力問題が解決しないかぎり,最終的な決着はつかない。
執筆者:嶋本 利彦
出典 平凡社「最新 地学事典」最新 地学事典について 情報

