日本大百科全書(ニッポニカ) 「地質科学国際研究計画」の意味・わかりやすい解説
地質科学国際研究計画
ちしつかがくこくさいけんきゅうけいかく
International Geoscience Programme
地層の層序学的対比のみならず、マグマ活動、鉱床の形成、地質構造発達などの地質現象を地質時代別に、また地域別に、国際的視野から対比するもので、「国際地質対比計画」International Geological Correlation Programme(略称IGCP)として1972年に設立された。
この国際地質対比計画は学問的寄与のみならず、人間環境の改善、資源探査の推進に役だつことを願って、国際地質科学連合(IUGS)とユネスコ(UNESCO)との協同事業として発足した。事務局はユネスコ本部に置かれ、国際地質科学連合会長とユネスコ事務総長との合意で決められた委員により構成されたIGCP委員会と、ほかにIGCP科学委員会がある。これらには参加各国の国内委員会(日本では、日本学術会議の地球惑星科学委員会IUGS分科会のIGCP小委員会)が対応している。多数の研究テーマについて5年を基本とする期間で研究が進められているが、そのテーマと担当者は、各国国内委員会から提案された案をIGCP科学委員会で検討して決定している。
2003年には、現名称の地質科学国際研究計画に変更されたが、すでに定着していたIGCPという略称はそのまま受け継がれた。名称変更に伴って、IGCPの研究テーマは、(1)地下資源(持続可能な社会)、(2)地球的規模の気候変動と生命の進化(地質記録からの証拠)、(3)地質災害(そのリスクの軽減)、(4)水文地質学(水循環の地球科学)、(5)地球動力学(地球環境をコントロールする地球深部の解明)、の五つに定められた。2015年の時点で、28の国際研究プロジェクトが進行中であり、これらのなかには日本人が研究代表者を務めるものが含まれている。
[木村敏雄・村田明広 2015年9月15日]