地下資源(読み)チカシゲン

デジタル大辞泉 「地下資源」の意味・読み・例文・類語

ちか‐しげん【地下資源】

地中に埋蔵されている天然資源。有用鉱物のほか、石油石炭天然ガス地下水地熱なども含まれる。

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精選版 日本国語大辞典 「地下資源」の意味・読み・例文・類語

ちか‐しげん【地下資源】

  1. 〘 名詞 〙 地下に埋蔵されている鉱産物などの資源。
    1. [初出の実例]「従来ボリビアの地下資源は、ただ外国資本をして舌なめずりさせる」(出典:ある隷属国の悲劇(1955)〈中野好夫〉)

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改訂新版 世界大百科事典 「地下資源」の意味・わかりやすい解説

地下資源 (ちかしげん)

われわれは自然界にあるいろいろなものを採取し,利用して生活している。われわれが自然に働きかけて採取し,利用するものはすべて資源であるが,そのなかで地下から得られる資源は地下資源と呼ばれる。その中には鉄鉱石や石炭などの鉱物資源,石油や地熱などのエネルギー資源(エネルギー資源には水力や石炭なども含まれ,また石油は鉱物資源といってもよい),地下水なども含まれる。ただし,地下水は水資源として,地表の水や極地の氷などとともに別の分類に入れるのが普通である。ここでは主として〈鉱物資源〉について述べ,〈エネルギー資源〉についてはその項目を参照されたい。

 われわれの遠い祖先の残したものに,古い遺跡の中から発見されるたくさんの石器がある。その中には,特定の地域で発見される特別な岩石を使っているものもある。ヨーロッパの各地には,火打石や刃物としてすぐれた性質を示すフリント(燧石(すいせき),石英)を採取した遺跡がある。日本でも,火山の周辺で発見される黒曜石火山ガラス)が矢じりや刃物の優れた材料として使われており,古い時代から交易品としての価値を認められていた。ただの石ころであっても,価値のある特別なものとして認識されるようになれば,それは資源ということになる。人々の生活が複雑になれば道具も多様になり,いろいろな材料が使われるようになる。土をこねて乾かし,さらに火で焼き固めて器を作る技術も生まれた。火を扱う知恵はやがて銅や鉄を製錬して銅器や鉄器を作る技術となる。金,銀,銅,スズ,亜鉛(鉱石),ヒ素(鉱石),アンチモン,鉄は古くから知られており,その利用の技術をもつ人々の間では重要な資源であったが,その他の金属の価値が認められるようになるのは人間の歴史の中ではきわめて最近のことである(図1)。硫黄は重要な地下資源の一つであり,かつては日本でも大量に採掘され,硫黄鉱業は重要な産業であった。古くは医薬品,黒色火薬の一成分,火の付木の塗布剤などに使われたが,化学工業の発展とともに硫酸の原料としての需要が増大した。火山などの周辺に発見される硫黄のみでなく,硫化鉱物を焙焼(ばいしよう)して得られる亜硫酸ガスも硫酸製造に重要であった。近年になって,石油が大量に消費され,その排ガス中の亜硫酸ガスが公害として問題にされるようになると,石油精製の途中でこの硫黄が回収されるようになり,副産物として得られる回収硫黄が,硫黄や硫化鉱の鉱山で採掘される天然硫黄や硫化鉄とすっかり置き換わることになってしまった。

 資源はいつでも人々の生活との関連において評価されるべきものであって,上の硫黄にしても,その用途の変化に対応して需要も変化し,資源としての重要さも変化する。かつては装飾品や貨幣としての用途がすべてといってよかった金にしても,今日ではむしろ工業的需要のほうが上回っている。ウランの資源としての価値が認められたのはここ数十年のことであり,その産地も生産量も世界的に変動し,さらに原子力利用後の放射性廃棄物の処理という大きな問題をも発生させている。

地下から得られる資源,とくに鉱物資源には,農業資源や水産資源とちがった次のようないくつかの特徴がある。(1)掘りとればなくなってしまい,再生産することはできない。(2)資源の偏在が著しい。(3)開発には多くの困難が伴う。

 地下資源とくに鉱物資源は,農業資源や水産資源のように,栽培,養殖によって生産できる資源ではなく,掘りとればなくなってしまう資源である。地球の歴史の中で作られた鉱物資源は新しく作られるものではなく,再生不可能資源などとも呼ばれるように,いかに豊かな鉱床であっても無限に生産を続けることはできない。ローマ・クラブが1972年に発表した《成長の限界》という報告書は,人々が現状のまま資源を消費し続けていったならば,いずれ資源は枯渇してしまい,そのため,資源の消費になんらかの歯止めをかける必要があると世間に対して警告したものである。未発見の鉱床の発見の可能性や,将来の消費の増減を見込んでの予測ではあるが,この報告書は大きな衝撃であった。しかし,未発見の鉱床がさらに多く発見される可能性もあり,未利用の新しい資源の発見もある。需要が増大して価格が上昇すればそれとともに需要が減退し,また逆に,価格の上昇によって,従来経済的に採取不能であった鉱床からの採取が可能になる場合も考えられる。資源のより有効な利用技術の発達や代替資源への転換による消費量の変化,資源のリサイクルといったものもある。こう考えれば,将来の資源需給の関係がごく近い時期に危機を迎えるとはいえないが,近年の激しい人口増加が続き,資源の消費が増大すれば,いかに新しい資源の開発があったとしても,いずれは限界を越してしまうことになる。

 資源の偏在が著しいということは,世界の埋蔵量と生産量の分布を見ればよくわかる。それぞれの資源の大部分がわずかな数の国々に存在し,その産出もそれら数ヵ国に占められている(図2)。地下資源の存在が地質の状況に支配されるため,このような結果になるのであるが,早くから開発が行われたために,すでにその鉱量を失ってしまい,かつての主要生産国の地位から脱落した国もないではない。また,地下資源の個々の鉱種についてみれば著しい偏在が見られるが,すべての地下資源をひっくるめて考えれば,なんらかの地下資源は世界のあらゆるところで生産され,利用されていると見ることも可能である。大地のあるところならどこにでも,利用しうるなんらかの地下資源があるという見方である。

 地下資源開発の困難さについては,地下資源の開発に携わったことのある人たちはだれでもよく知っている。鉱床が地下にあることは,その発見を困難にし,採取についてもいろいろと困難な状況をつくり出す。この困難さは技術,資金の蓄積を必要とし,地域的な偏在とも重なって,大資本による独占や国家間の軋轢(あつれき)の原因となることもある。世界には,資源をもちながらその開発のできない国が数多くあり,また逆に,技術や資金を保有しているのに,それを活用する資源が不十分な国もある。採取した資源を消費する市場も必要であり,輸送も重要な問題である。発見が容易で,採掘のしやすい優秀な鉱床はすでに開発しつくされ,今日の鉱床の多くは,高い山の頂や,砂漠の奥,人跡まれな森林地帯など,厳しい気象条件下にあったり,僻遠(へきえん)の地にあったりする。近代文明に近い,有利な条件の下にあっても,品位が低かったり,地質の関係で採掘しにくかったりして,開発は容易なことではない。低品位で,かつては採掘の対象とされなかったような鉱床を,近代的な機械を駆使して大規模な採掘を行うものが多く,それらを使いこなす技術レベルと資金が必要であり,労務者の質や作業環境の整備も必要である。採掘によって引き起こされる自然環境への影響に対しても,十分な注意が必要である。開発に時間がかかることも,地下資源開発の難しさの一つである。発見した鉱床も,実際に開発できるかどうか十分な調査が必要であり,開発に必要な道路や立坑や,いろいろな機械設備の整備など,数年から10年以上もの年月を要する。それも,すべてが順調に進行するとは限らない。生産を開始した後でも,紛争や経済価値の下落など予期しない情勢の変化によって,計画に齟齬(そご)をきたした例は数多い

地下資源のあるものは海にも存在する。海水は世界のどこでもほぼ同じ成分をもっており,しかもCl,Mg,Na,K,I,Brなどをはじめいろいろな元素を含んでいるので,採取して利用することができる。それぞれの濃度が低いため,大量の海水を処理しなければならないが,昔から各地で採取されている食塩は陸上の岩塩と競合し,マグネシウムも海水から採取されるものがあり,最近では陸上の資源と対立し,純度の高いものはむしろ海水から得られるもののほうが多くなってきている。ウランを採取する計画もある。

 海底にも多くの鉱物資源が知られている。世界産額の4割以上を占める東南アジア諸国のスズは,そのかなりの部分が海底から得られるものである。そのほかにも,イルメナイト,モナザイト,ルチル(金紅石),ジルコンなどが海岸や浅い海底の砂から採取され,ダイヤモンドや金を採取しているところもある。日本の周辺では,砂利や砂が重要である。かつて大量に採取されていた海岸の砂鉄は,現在では経済性を失って,操業を継続できなくなってしまった。深さ5000~6000mもの大洋底に知られるマンガン団塊,最近発見され注目されている深海底の熱水鉱床,さらには沿岸,沖合のリン鉱石鉱床など,海にはまだまだ将来の資源となるものがあると考えられ,期待されている(〈海洋開発〉の項を参照)。

日本は資源のない国といわれるが,これは当を得ていない。本来,日本は,気候もよく,豊葦原(とよあしはら)の瑞穂(みずほ)の国とうたわれた地味の肥えた土地をもち,東洋の黄金国ともいわれて,地下資源にも恵まれた豊かな国なのである。37万km2の土地に,1億2000万人の人々が高度の生活をするために資源が不足しているのであって,資源がないのではなくて,資源が足りないのである。現在でこそ膨大な地下資源を海外から輸入し,それを加工して海外に輸出しているが,かつては全国に数多くの鉱山が開発され,銀,銅,亜鉛などの鉱産物を海外に輸出した鉱産国だったのである。日本の財閥系の企業の多くが,尾去沢,足尾,日立,別子などの大銅山,神岡の鉛,亜鉛,高島や三池の石炭を中心とする鉱山業を中核に形成されたことを見ても,そのことがうかがわれる。古くから国土の開発が進み,発見されやすく,採掘のしやすい鉱床はすでに掘りつくされてしまい,今日の高賃金,高コストの体系の下では,経済的に採取可能な鉱床が少なくなってしまったために,地下資源がない国のように見えるけれども,国土全体は激しい地殻変動を受けて,各所に著しい鉱化作用が見られる。国内で消費される全資源量にくらべれば,国内産の資源は確かに少ないが,それでもなおかなりの量の資源が採取され,新しい鉱床の発見もある。石灰石のように,世界でも上位にランクされる生産を行っている資源もある。

 地下資源の開発は,先にも述べたように,いろいろと困難な問題があり,国際的にも複雑な関係がからみ合っている。外国から資源を得ようとする場合でも,単にお金だけあれば買えるというものではない。資源を確保するためには,資源を開発する技術や人材をもっていなければならない。国内にまったく資源がないというのならばともかく,それなりの資源をもつ日本としては,それらの資源を大事に使いながら,なおいっそう,国内の資源を開発する努力を続けていく必要がある。
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百科事典マイペディア 「地下資源」の意味・わかりやすい解説

地下資源【ちかしげん】

人間生活に有用な金属・非金属鉱石,石炭石油粘土,岩石などの総称。需要の増大にともない,枯渇が危惧される一方で,探査・採掘・精製技術の進歩により,地下深部のもの,低品位のものまで採取が可能となっている。またウランに見られるように,地下資源の利用は常に環境汚染の危険をともなっており,議論がなされている。→地球温暖化省エネルギーリサイクル運動
→関連項目資源

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「地下資源」の意味・わかりやすい解説

地下資源
ちかしげん
underground resources

地下に存在している有用資源。地球生成以来,地殻の中で大規模な構造運動や火成活動が行われ,種々の金属・非金属元素が移動・分散・濃縮して,地殻の特定の場所に地下資源が生成された。このようにしてできたものには,金属・非金属鉱物,地熱などがある。石炭,石油,天然ガスおよび一部の岩石は,動植物および土砂が2次的に堆積して生成した地下資源である。大気圏および地表を経て地下にたくわえられている水も重要な地下資源の一つである。地下資源は地域的偏在性があり,技術の発達と経済性によってその価値が変動し,その多くは有限であるが,工業原料として重要である。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「地下資源」の意味・わかりやすい解説

地下資源
ちかしげん

鉱物資源

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世界大百科事典(旧版)内の地下資源の言及

【地層】より

…一方,マントルクリープによる地殻薄化と地溝形成も有力な考えである。
[地層と地下資源]
 地下資源の70%以上が地層中から産出する。石油・天然ガスおよび石炭などのエネルギー資源はすべて堆積性鉱床といい,地層中から産する。…

※「地下資源」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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