改訂新版 世界大百科事典 「坑内支保」の意味・わかりやすい解説
坑内支保 (こうないしほ)
mine timbering
坑内の崩壊を防ぐことを保坑といい,保坑の目的で設けられる施設を坑内支保あるいは坑内支柱と称する。その種類は多いが,使用材料からみると木枠,鉄枠,コンクリートを流し込むコンクリート巻,コンクリートブロックを積み上げるブロック巻などに分けられ,形からみると打柱,三つ枠,合掌枠,アーチ枠,円形枠,木積(こづみ)などに分けられる。打柱は最も簡単な支柱で,1本の柱を立てるだけで坑木か鉄柱が用いられる。三つ枠ははり(梁)と両脚の3本を組み立てたもので,坑木のほか,古レールやI形鋼などの鉄材も用いられる。脚とはりとの間に斜めの柱を加えたものを合掌枠という。アーチ枠,円形枠は古レールやI形鋼をそれぞれの形に2部材あるいは数部材で加工して組み立てたもの,木積は坑木または鉄材を井形に積み上げたものである。これらは切羽または坑道(横坑)における坑内支柱の例であるが,立坑では,昔は坑木による四角な枠や,煉瓦を積み上げる煉瓦巻も用いられたが,現在はコンクリート巻が普通である。坑内支柱は地圧に対抗するために設けられるものであるが,機能的にみると剛性支柱と可縮性支柱,可屈性支柱に分けられる。剛性支柱は地圧に対抗しきれるまで対抗するもので,地圧が支柱の強さより大きくなると破砕される。可縮性支柱,可屈性支柱は,強い地圧がかかると支柱の構成部材の継手の部分が縮むかたわむかして破砕されずに坑道断面の変形をゆるしながら保持しつづける支柱で,剛性支柱では対抗できないような強い地圧にも耐えることができる。炭鉱の一般的な採炭法である長壁式採炭切羽では,昔は木枠を用いていたが,その後鉄柱およびカッペによる支保(カッペ採炭)が導入されて採炭機械化が安全にできるようになり,さらに現在,緩傾斜切羽では油圧機構で前進する自走枠が普及している。坑内災害のうちでも落盤災害は比較的比率が高く,保安上から支柱は重要な役割を担っているが,岩石や地層の性質,採掘深度,湧水の有無などによって坑道や切羽に現れる地圧の状態が非常に異なるので,この状態をよく見きわめて適当な支柱を施さなければならない。
→支保
執筆者:大橋 脩作
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報