カッペ採炭(読み)カッペさいたん

改訂新版 世界大百科事典 「カッペ採炭」の意味・わかりやすい解説

カッペ採炭 (カッペさいたん)

炭鉱の採炭切羽において,支保として鉄柱およびカッペを用いる採炭法をいう。切羽では天盤が崩落しないように支保(坑内支保)で支える。以前は多くの場合,2本の木柱と1本の木製の梁(はり)を組んだ木枠(荷合せ枠)を多数並べて切羽全体の天盤を支えていたが,のちに鉄柱が使われるようになると,梁として強度の大きい鋼製,アルミニウム製のものが用いられるようになった。これをカッペと呼んでいる。カッペKappeとはドイツ語で帽子の意味である(英語はlink bar)。ドイツで発達したこの採炭法は戦後日本に紹介され,長壁式採炭切羽に広く普及した。以前使われていた荷合せ枠は,炭壁面に柱があるため切羽の機械化に対して致命的な欠陥をもっていたが,カッペを鉄柱から前方に張り出して天盤を支えることにより炭壁面無支柱採炭が可能になった。これにより,切羽運搬機を連続的に移動させること,採炭機械を中断することなく切羽面に沿って使用することができるようになり,採炭能率が著しく向上した。緩・中傾斜の長壁式切羽のほとんど全部に使用されたが,その後自走支保が開発され,現在では機械化採炭切羽の支保の主力は自走支保に移った。
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百科事典マイペディア 「カッペ採炭」の意味・わかりやすい解説

カッペ採炭【カッペさいたん】

炭鉱の切羽(きりは)で支保に鉄柱とカッペを用いる採炭法。長さ80〜120cmの鋼またはアルミニウム製I形断面の天盤支持梁をカッペという。第2次大戦中,ドイツで発達。長壁式採炭法において炭壁面無支柱採炭が可能となり,コールカッターコンベヤなどの導入による切羽の機械化が容易となり採炭能率が著しく向上した。なお現在では新たに開発された自走支保が主力となっている。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カッペ採炭」の意味・わかりやすい解説

カッペ採炭
カッペさいたん

長壁式採炭法一種。炭鉱内の切羽で切羽支持に鉄柱を使い,天盤の崩落を防ぎながら石炭を掘進む代表的な近代採炭法。カッペ Kappe (rink bar)とは相互に連結できる構造を有する鋼製または軽合金製の梁材で,鉄柱上に設けて天盤を支持する。この採炭法の採用によってコンベヤと切羽面との間の柱がなくなり,炭切り,積込みが容易になった。現在,日本の炭鉱のほとんどが採用している。

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世界大百科事典(旧版)内のカッペ採炭の言及

【石炭鉱業】より

… 1949年からエロア資金によるアメリカ炭鉱機械の輸入が認められ,その後おもにドイツの機械・技術が導入された。とくにカッペ採炭法が51,52年ころから導入され,57年ころまでに主要炭鉱に普及した。カッペ採炭とは,鉄柱とカッペと呼ばれる鉄の梁で天盤を支え,切羽面に無支柱の空間を広げ,地圧利用と空間拡大によって採炭とコンベヤ移設を容易にする方式であり,日本では採炭機械化とは必ずしも結びつかず,切羽における採炭労働の強化をもたらす場合が多かった。…

※「カッペ採炭」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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