坑内で天井の岩盤部分(通常この部分を天盤または冠(かむり)という)が落下したり、側壁部(鉱山用語で土平(どべら)という)が倒壊してくる現象を総称して落盤ということが多い。規模は大小さまざまであり、小石が少数個落ちてくる落石から、崩落といって坑道の長い区間あるいは採掘場が広範囲に落下岩石のため埋没する現象まで含まれる。
落盤には一部に人為的要因もあるが、岩盤がもろく弱い箇所とか、亀裂(きれつ)の多い岩盤内の坑道あるいは断層、褶曲(しゅうきょく)が存在する地質的擾乱(じょうらん)地帯におこりやすい。つまり、自然条件が大きな要因となっている。そのため、予知のみならず、完全な防止対策もまだ確立されていない。完全防止のためには、坑内をすべてコンクリートなどで固めればよいかもしれないが、それでは鉱石や石炭の採掘費は甚だしく高額になり経済的に引き合わなくなる。土木事業でもトンネル、地下発電所などの地下構造物をつくるが、これらのものは永久的使用が目的で、コンクリートで堅固に構築される。しかし、鉱山、炭鉱の坑道はできるだけ安く掘り、あまり修理費をかけないのが原則である。しかもその坑道の支配する採掘区域が終掘すれば、できるだけ速やかに施設を撤去して坑道を放棄することが必要条件である。そのため坑道は使用期間中さえ最少の費用で維持されればよい。落盤の完全防止のきわめてむずかしい理由はこれである。一般的にみて、落盤による罹災(りさい)者数、死亡者数の比率は、炭鉱における全羅災者数、全死亡者数の全災害数の3分の1から4分の1の間にある。このような比率は炭鉱ばかりでなく、鉱山でも変わりがない。一方、炭鉱、鉱山とも落盤の回数は年度を追って減少している。それは炭鉱、鉱山数の減少もあるが、稼働延べ100万人、および出炭100万トン当りの災害回数をみても減少傾向にある。つまり、保安意識の向上、採炭切羽(きりは)(掘っている箇所)の天井を全面的に覆うシールド枠の導入、坑道支保に鋼枠が全面的に使用されてきた結果でもある。また坑道掘進先には裸天井(はだかてんじょう)の時間をできるだけ短縮して落盤防止に役だてるため、「先受け」と称する、本枠の取り付け前に一時天井を支持する器具を使用することを義務づけたことなども落盤減少につながっていると考えられる。しかし、最大の落盤対策は、細心の注意でよい支保を行うことである。具体的には坑道の枠間(わくま)をていねいに囲うこと、採炭場の天井はできる限り強い力で支えるという二点に帰する。
[磯部俊郎]
坑内で地圧のために生じる岩盤の亀裂・弛緩などによる破壊現象やその他の地質条件などによって岩盤との連係を失った岩石が,自重により天井から崩落すること。側壁からの場合は崩壊という。まず岩石自体の強度で落盤を支えるが,それが弱い場合には各種の支保によって支えられる。破壊力がこれらの抵抗の限度を超えると,支保は変形,破損し,落盤,崩壊の現象を生ずる。金属鉱山,石炭鉱山で発生する災害の事由別では,落盤および側壁の崩壊は取扱い中の器材・鉱物による災害とともに最も多い。とくに炭鉱の夾炭層は,水成岩で層状に沈積して生成された岩石であり,火成岩に比較して軟らかく剝離(はくり)性をもっている。また日本の炭田は,火山とこれに関連する地殻変動を受け褶曲,断層等が多い。これらが落盤,側壁崩壊の災害が多い基本的な原因であると考えられている。この災害を防止するには,掘られた空洞に対して速やかに適当な支保を施し,それを適切に管理することが必要である。すなわち坑内において落盤または崩壊のおそれが多いときは,速やかに天盤,側壁等の状態に適応する支柱その他の設備を設ける。必要があるときは仮支柱を設ける等応急の措置を講ずる。掘進個所ではそのほか先受け,作業面押えを設ける。折損,腐朽した支柱は速やかに取り替え,補強する。作業場の天盤,側壁および作業面をしばしば検査し,危険のおそれの多い場合は浮石を落とす等必要な処置を講ずるなどの対策が重要である。採炭切羽においては,切羽進行が順調な場合,荷重は正常に炭壁にかかり払跡の天盤は規則的に崩落沈下して安全であるが,切羽設定後まもなく天盤荷重が正常にかからない場合とか断層等の地質構造の変化によって荷重が不均一な場合は崩落を起こす可能性がある。これを防止するには,支保の枠間を狭くするとか,つなぎを入れて前後の枠と一体化する等の補強対策が必要である。近年,緩傾斜切羽はほとんど自走支保化したので採炭切羽での落盤災害は激減した。
執筆者:大橋 脩作
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