日本大百科全書(ニッポニカ) 「塩酸メチルフェニデート」の意味・わかりやすい解説
塩酸メチルフェニデート
えんさんめちるふぇにでーと
methylphenidate hydrochloride
緩和な中枢神経興奮薬。製品名は「リタリン」。スイスのチバ社(現ノバルティスファーマ)で1944年合成された。日本では1958年(昭和33)発売。適応はナルコレプシー。「麻薬及び向精神薬取締法」で第一種向精神薬に指定され、使用、取扱いが規制されている。脳のドーパミン神経系の神経終末において、ドーパミンの再取込みを行っているドーパミントランスポーターを阻害し、ドーパミン濃度を上げ、神経の興奮性を高めることにより覚醒(かくせい)作用を発揮する。作用の強さおよび持続性は、メタンフェタミン(覚醒剤)とカフェインのほぼ中間で、薬物依存性を有する。白色の結晶性粉末で、臭いはない。製剤には錠剤(10ミリグラム)、散(1%)があり、1日20~60ミリグラム、1日1~2回服用する。副作用は、口の渇き、頭痛、発汗、食欲減退など。重大な副作用には剥脱(はくだつ)性皮膚炎、狭心症、悪性症候群、脳血管障害などがあり、過度の不安、緊張、興奮性、緑内障、甲状腺亢進、不整脈がみられる。狭心症のある者には禁忌(使用不可)で、6歳未満は厳禁である。覚醒効果のため不眠に注意し、夕刻以後の服用はさける。連用により薬物依存を生ずるので、本剤の取扱いはナルコレプシーの診断、治療に精通し、本剤のリスク等についても十分管理できる医師・医療機関、管理薬剤師のいる薬局のもとでのみ行う。また、薬局においては、調剤前に当該医師、医療機関に確認して調剤を行う。
[幸保文治]