正しくは〈獣医師〉と称する。一般に動物を飼育する場合,健康維持はなかなか難しい。その動物が愛玩用であれ,生産物の利用を目的とする家畜であっても,病気にかかると,その本来の寿命いっぱいに生き続けられるように治療が施されることが望まれる。もちろんこの場合は,専門的知識が必要である。また動物ないしはその生産物から,人へ病気が伝播(でんぱ)されることもあり,それを防ぐ必要もある。これらの社会的要求にこたえるための職能が獣医師である。日本では1885年,獣医免許規則が公布され,この規則により免許を得た獣医師でないと,家畜への診療業務を行ってはならないことになった。現在,獣医師法(1949公布)では,獣医師は技能の最高水準とその業務の適正を確保し,畜産業の発展を助け,もう一つの公衆衛生の向上に寄与するように務めるべく規定されている。
獣医師になるには,農林水産大臣の監督のもとに獣医師免許審議会が毎年少なくとも1回行う獣医師国家試験に合格し,農林水産大臣に対し必要な申請手続きを経て免許を受け,初めてその資格を得る。この国家試験の受験資格は,学校教育法に基づく大学において6ヵ年の一貫教育を受け,獣医学の正規の課程を修めて卒業した者がもつことになっている。獣医師でないものは,家畜(ウシ,ウマ,ヒツジ,ヤギ,ブタ,イヌ,ネコおよびニワトリをいう)の診療を業務としてはならない。
家畜が伝染病におかされるとその産業上の損害はきわめて大きいので,家畜の伝染病のまんえんを防止するため,農林水産省または都道府県知事は,家畜防疫官または家畜防疫員を獣医師の中から任命する。家畜伝染病予防法に規定される家畜の伝染病の患畜または疑似患畜は,家畜防疫員の指示に従って,その病畜を殺処分しなければならない。近年は獣医師の担当もしくは分担すべき分野が広がり,そのため,特殊な専門職として強い義務と権限が課せられている。
→獣医学
執筆者:本好 茂一
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