多数当事者の債権関係(読み)たすうとうじしゃのさいけんかんけい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「多数当事者の債権関係」の意味・わかりやすい解説

多数当事者の債権関係
たすうとうじしゃのさいけんかんけい

複数の債権者または複数の債務者が、同一の給付を目的とする債権関係に関与している場合をいう。民法規定するものとして、分割債権債務、不可分債権債務、連帯債務保証債務(427条以下)の4種類があり、民法に明文の規定がないが同じく多数当事者の債権関係に含められるものとして、合有債権債務、総有債権債務、不真正連帯債務連帯債権などがある。多数当事者の債権関係の原則的な態様は分割債権債務である。すなわち数人の債権者または数人の債務者がいる場合において別段の意思表示がなければ、各債権者または各債務者は平等の割合権利を有し義務を負う(民法427条)。それ以外の態様は、あるいは契約によって発生し(たとえば連帯債務や保証債務など)、あるいは法律の規定によって発生し(たとえば連帯債務など)、あるいは事柄性質によって当然に発生する(たとえば不可分債務や不真正連帯債務など)。

 多数当事者の債務関係は、複数主体という形式面からの総称であり、かつそのように特徴づけられていたが、最近ではそれらの機能からとらえ直されている。とくに、意思表示による不可分債務、連帯債務、保証債務などは人的担保手段として債権担保の機能を果たすものであり、そのような一連制度として把握されている。また、不真正連帯債務とは、複数の債務者がそれぞれ全部の義務(全額賠償責任など)を負う場合の総称であって、これを不真正連帯債務として統一的に把握することに疑問を提起する考え方が最近では有力である。

淡路剛久

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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