1960年代から1980年代にかけての国際政治の構造的特徴を表す政治用語。第二次世界大戦直後の国際政治は、米ソ(アメリカとソ連)両大国をそれぞれの極poleとする東西二陣営に分かれて対立し、二極化bipolarizationの時代といわれた。しかし戦後15年を過ぎるころから、米ソの二極支配を不満とするフランス、中国の台頭、第三の道を歩むインド、旧ユーゴスラビアなど非同盟諸国の比重の増大により、国際政治にも大きな変化がみられるようになった。とくに一枚岩とみられていた社会主義陣営でも、ソ連の一元的支配に反発する中国の台頭、あるいはユーロコミュニズムEurocommunismといわれた西ヨーロッパ各国共産党の登場によって、社会主義実現への多元主義polycentrismが世界的に承認される一方、資本主義陣営内でもヨーロッパ共同体(EC、現ヨーロッパ連合=EU)、日本の経済力の増大に伴う発言力の強化によって、それまでのアメリカ中心の経済体制が崩れた。こうした西側陣営内の米・欧・日による三極化への移行といった現象を総称して多極化とよんだ。
[藤村瞬一]
(坂本義和 東京大学名誉教授 / 中村研一 北海道大学教授 / 2008年)
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