多田寺(読み)ただでら

精選版 日本国語大辞典 「多田寺」の意味・読み・例文・類語

ただ‐でら【多田寺】

  1. 福井県小浜市多田にある高野山真言宗の寺。山号は石照山。天平勝宝年間(七四九‐七五七)勝行の創建と伝えられる。ただじ。多田薬師。

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日本歴史地名大系 「多田寺」の解説

多田寺
ただじ

[現在地名]小浜市多田

九花きゆうか峰の西側山裾にあり、天平勝宝年中(七四九―七五七)の創建と伝える(若州管内社寺由緒記)。高野山真言宗。山号は石照山、本尊薬師如来(木造立像、国指定重要文化財)。「若州管内社寺由緒記」によれば、当寺は昔一二坊あり、灯油料として天皇より寄付された田地一六町余があったという。大通だいつう(現滋賀県長浜市)に残る梵鐘銘に、「若狭国遠敷郡富田郷 多太寺 貞治二年才次癸卯六月二十一日 大勧進院主権律師教弁 檀那沙弥道性 沙弥尼宝貞蓮 大工藤原正光」とある。天正一二年(一五八四)一〇月七日の新庄蔵人宛羽柴秀吉書状(秋山断氏所蔵文書)によれば、秀吉が前年に柴田勝家を滅ぼして若狭国から没収した鐘を新庄蔵人が受取っており、長浜城や他の寺にも鐘を与えるとあるので、秀吉が徴集して大通寺のものとなったことがわかる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「多田寺」の意味・わかりやすい解説

多田寺
ただじ

福井県小浜(おばま)市多田にある高野山真言(こうやさんしんごん)宗の寺。石照山(せきしょうざん)と号する。本尊薬師如来を祀(まつ)り「多田の薬師さん」で親しまれている。若狭観音(わかさかんのん)霊場第18番札所。多太ヶ岳は役行者(えんのぎょうじゃ)の開いた若狭修験(しゅげん)の根本道場で、その北麓(ほくろく)にある多田寺は行基(ぎょうき)の高弟勝行(しょうぎょう)によって749年(天平勝宝1)開創された。寺伝によると、薬師如来の霊験著しく、孝謙(こうけん)女帝の眼病平癒を祈願するとたちまち利益(りやく)を得たという。これによって山林100町歩(約100ヘクタール)、田畑などの寄進を受け、「石(せきしょう)山医王閣」の扁額(へんがく)を下賜され、勅願(ちょくがん)寺とされた。その後、坂上田村麻呂(さかのうえのたむらまろ)、多田満仲(みつなか)、源頼光(らいこう)の崇敬を受け、祈願所となった。本尊脇侍仏(きょうじぶつ)の十一面観音像および菩薩(ぼさつ)像は本尊とともに国の重要文化財。そのほか寺宝に阿弥陀如来坐像(あみだにょらいざぞう)、四天王像、十二神将像などがある。

[野村全宏]


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