一つの受精卵から2個以上の胚が生ずる現象をいう。ヒトの一卵性双生児も多胚現象の一つである。ヒトの多胚は,なんらかの偶発的な原因で,2細胞期の割球が透明帯から脱出して分離し,おのおのが独立に発生を開始したものと考えられている。ヒツジやラットでも,2細胞期の割球が全能性をもち,人為的に割球を分離しても,それぞれが完全な個体に発生可能なことが実験的に証明されている。ウサギやマウスでは少なくとも8細胞期まで,割球は全能性を有していることを示唆する実験結果がある。多胚によって生じた動物は,遺伝子構成が互いにまったく同じであることが期待されるので,人為的に作出された多胚から得られた動物は遺伝や発癌,薬剤の作用機構などの研究にきわめて有用であることが予想される。しかし,現在のところ,実験的にそのような動物を多数作出することは困難で,十分応用されるには至っていない。
自然の生殖過程で,多胚を起こす動物もある。アルマジロの仲間では一卵性の四つ子を産む種Dasypus novemcinctusや,一卵性八つ子(場合によっては一卵性十二子)を産む種Dasypus hybridusがあることが知られている。
ヒトで多胚の起こる理由は不明である。メダカやグッピーのような魚類では,ときおり偶発的な多胚が観察され,胚発生途上の酸素分圧が多胚形成に関係していることを示す実験結果も報告されているが,ヒトを含む哺乳類のそれと直接関連づけることは難しい。
執筆者:舘 鄰
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