天問(読み)テンモン

デジタル大辞泉 「天問」の意味・読み・例文・類語

てんもん【天問】

中国古代の文学作品集「楚辞」に収められた巻の一つ。屈原天地創造や国の歴史についての疑問を記したもの。ティエンウェン。
中国の火星探査機。2020年7月に長征5号により打ち上げられた。周回機と着陸機およびローバー祝融からなる。2021年2月に火星周回軌道に投入され、5月にユートピア平原南部への着陸に成功。火星の大気地質などを調査する。ティエンウェン。

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改訂新版 世界大百科事典 「天問」の意味・わかりやすい解説

天問 (てんもん)
Tiān wén

中国古代の歌謡楚辞》の編名。宇宙の開闢(かいびやく)にはじまり,天の構造や大地の成り立ち,夏・殷・周の歴史的事件についての疑問を列挙して成り立つ特異な作品。質問の形式はとるが,その内容は中国古代神話・伝説についての基本資料の一つとなる。王逸の注は,楚の宮廷から追放された屈原が,楚の先王の廟の壁にかかれた神怪の図を見て,みずからの憤懣をこめつつ,その図に対する疑問を書きつけた,それゆえに編全体に秩序がないのだとする。ただ壁画を見てそれに書きつけたという説には懐疑的な学者が多い。また全体が混乱しているという点についても,天についての疑問,大地についての疑問,夏王朝に関する疑問等々と,四言句を基本としながらも,それぞれの質問内容ごとに独自の句法があり,まったく秩序がないのではない。質問内容ごとに特徴的な文体を持つことは,来源のいささか異なる伝承が一つにまとめられたであろうことを示唆し,ある個人の一時の作ではないことを推定させる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「天問」の意味・わかりやすい解説

天問
てんもん

楚辞

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世界大百科事典(旧版)内の天問の言及

【楚辞】より

…そうした基礎の上に,戦国後半期の中国全土が統一に向かう趨勢の中で,文学的な内容をそなえた楚辞の作品群が形成されてくる。 天地構造や歴史に関する疑問を列挙した〈天問〉,身体を遊離した魂を招き返そうとする〈招魂〉,山川の神々の祭歌である〈九歌〉などが楚辞の宗教的基盤をよく反映した作品だと言えよう。こうした基礎の上に,地上に入れられず,天上や神話的な異域を遊行する主人公の自叙からなる〈離騒〉が形成されて楚辞文学の頂点をなす。…

※「天問」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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