天役(読み)テンヤク

デジタル大辞泉 「天役」の意味・読み・例文・類語

てん‐やく【天役/点役】

中世朝廷大儀造営があった時など、臨時に賦課した雑税

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「天役」の意味・わかりやすい解説

天役 (てんやく)

本来は中世に朝廷の課した公事で,勅事,勅役と同じ。造内裏役,大嘗会役,伊勢神宮役夫工米(やくぶくまい)などの一国平均役がその代表であった。戦国末期の《日葡辞書》では点役とあり,〈ある仕事をするようにと,主君がすべての人に負わせる任務または義務〉となる。天役(天皇の課したもの)から点役(主君=領主の点定した役)への語句および語義の変化の内に,中世社会の展開を読みとることは容易であろう。公方が朝廷,将軍の意から,守護荘園領主,個々の在地領主をも意味するようになっていく流れと同じである。新田義貞が,〈兵粮のためにとて近国の荘園に臨時の天役を掛け〉たように(《太平記》),以後守護の賦課した守護役も天役と称されるようになっていく。

 しかしなお〈臨時天役〉と〈惣荘平均の天役〉に区別はあったが,室町時代の辞書《文明本節用集》には,すでに点役とある。内容の変化が語句の変化を招いたものといえよう。
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