日本大百科全書(ニッポニカ) 「天気学」の意味・わかりやすい解説
天気学
てんきがく
Wetterkunde ドイツ語
天気について考究する学問で、天気予報などの基礎となる気象学の一分野。英語にはこの名称はなく、ドイツ語の訳語としてこのことばが使われる。天気学には天気自身の性質や構造を調べる基礎的分野と、天気のさまざまな要素が人間などの生物に及ぼす影響を調べる応用分野とがある。
基礎的分野においては、天気に関連した中間規模の気象学mesometeorologyがそのおもな対象となる。そこでは、たとえば天気の一つの重要な要素である雲量の変化(日変化、年変化、地域的分布)などが、天気学の一分野として調べられており、これを特別に雲学nephologyということもある。また雨の降り方が調べられることもあり、これは大雨洪水予報の基礎となることとしてきわめて重要である。英語では天気weatherは風windと同根のことばであることからもうなずかれるように、それぞれの地域におけるさまざまな風向の風は、それぞれ特有の天気をもたらすことは古来知られたことである。一つのベクトル量としての風を解析することは、したがって天気学の重要な一分野となるのであり、これはまた天気の静的な見方を動的な見方に発展させる契機となるものである。ここでも風の日変化、年変化、地形によるさまざまな変形が問題になるが、とくに局地的強風の認められる地域では、局地風の吹き方などが大きな研究対象となる。
天気そのものについては、時系列上のその持続性、周期性などが問題になるのであり、低気圧などに伴われた天気分布の研究は、総観気象学synoptic meteorologyという一つの分野をつくるほど数多くの研究が行われている。天気の影響を対象とした天気学の応用部門は、さらに広く応用気象学の一分野といっても差し支えなく、各種産業と気温、湿度、風および雨や雪などとの関係が、合理的な企業の計画のために各分野で行われている。また防災上の立場から海難、航空事故、農業災害などと結び付けて天気が調べられることが少なくない。
[根本順吉]